研究課題/領域番号 |
19K23554
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
児玉 千絵 國學院大學, 研究開発推進機構, 助教 (30847314)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | ストックマネジメント / 都市形成史 / 公共施設 / 超長期的ストック効果 / 都市更新モデル |
研究実績の概要 |
現在日本では人口減少にあわせて都市インフラの総量削減が求められている。既に多くの公共施設(建築物)で老朽度に応じた更新・統廃合計画が進んでいるものの、公共施設の設置・移転で生まれる都市空間の集積とストック効果及び現行統廃合計画以前の長期的な都市履歴の解析を踏まえた公共施設マネジメント方策が検討されているとは言い難い。 そこで本研究は、人口減少にあわせて都市インフラの総量削減が求められる中、公共施設の設置・移転で生まれる都市空間の集積と、公共施設整備によるストック効果の「超長期的」な喪失・生成メカニズムを解明することを目指している。 具体的には、前年度まで点としての公共施設等の設置・移転データを収集した愛媛県松山市を対象に、今年度は線としての交通インフラである都市計画道路の計画変遷を可視化する作業を行い、図書として刊行した。また、今後リニア中央新幹線の整備によって新たな広域高速交通網が形成される岐阜県東濃地方を新たな対象血として、近世の街道沿い集落や宿場町・在郷町等が、近代化の過程でどのようなインフラ整備を行ってきたのか。また、それらが将来リニア中央新幹線の開通や高速自動車道の自動運転サービス開始によってどのように再編されるべきかという視点から、過去に存在した公共施設の設置・移転・廃止の実態を明らかにするとともに、施設周辺の都市化状況を質的・量的に同時に記述することを目指した。 今年度は、資料収集と現地調査に困難が生じ、東濃地方街道沿い集落の1つをモデルケースとして調査するにとどまった。主に郷土史料(市史、絵図・地図、自治会記念誌、旧土地台帳等)や現行の公共施設マネジメント計画等の公文書、市県議会議事録等を中心に、対象施設の現在検討されている統廃合計画および史実としての過去の施設新設・移転等について、その年代・位置を緯度経度情報化するための資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、1年半に渡る研究期間を3期に区分している。主に、第1期はデータ作成、第2期はデータ可視化と分析・考察、第3期は対外的な発表を行う予定であり、令和2年度は第2-3期にあたる。 まず、第1期のデータ作成については愛媛県松山市を対象に、対象施設の設置・移転・廃止等192件の発生年を緯度経度情報とともにデータ化することができた。さらに、GISや統計ツールを使用した3次元マッピングにより、第2期に実施予定の可視化についても簡易的な検討を行うことができた。今年度はさらにインタビューや講演会記録などをもとにした同市の都市計画道路の計画変遷の書籍化に参加し、道路インフラの計画変遷を図として可視化することができた。 しかし、第2期当初から、同市を対象にしたデータの欠損を補うための追加調査等の実施や、収集した資料に基づくデータベース作成のため人員雇用管理が困難となったため、研究計画を変更し、新たに現地調査が実施可能な対象地を岐阜県東濃地方に求めた。実際に、令和2年度後半には中津川市付知町を対象をモデルケースとして現地調査を実施し資料の収集を行うことができたが、データベースを構築するには未入手資料が多く、未だ追加調査実施の見通しが明らかでないことから、事業年度を1年延長するに至った。 今後は、勤務地や愛媛県松山市および岐阜県中津川市を含む東濃地方の社会情勢を踏まえ、柔軟に対象地を設定し、他研究機関の協力も得て現地の資料収集に協力を仰ぐ体制や、収集した紙媒体の資料をもとに遠隔でデータベース化を進める人員体制を整える必要がある。また、郷土資料以外に遠隔で入手可能なデータで同様の都市構造分析を行えるよう、再度公共施設等の設置・移転に関するデータの入手可能性と汎用性を検討する。 以上の社会情勢に対応するための調査およびデータ入手見通しが明確に立てられていないため、やや遅れているという区分での評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べた通り、今後は勤務地や愛媛県松山市および岐阜県中津川市を含む東濃地方の社会情勢を踏まえ、柔軟に対象地を設定し、他研究機関の協力も得て現地の資料収集に協力を仰ぐ体制や、収集した紙媒体の資料をもとに遠隔でデータベース化を進める人員体制を整える予定である。また、そもそもの収集対象としている郷土資料が、出張調査以外では入手困難なため、ほかの遠隔で入手可能なデータで同様の都市構造分析を行えるよう、再度公共施設等の設置・移転に関するデータの入手可能性と汎用性を検討していく。特に、対象とする公共施設を悉皆的に捉えるのではなく、自治体庁舎や交通拠点、産業拠点など、特に重要な施設に限定することで、収集資料を絞り込むことを検討する。 残された研究期間は、その前半を新たに第2期として上記データ収集方針の変更検討に割り充てる。残りの半分を第3期として、データ可視化および分析作業を中心に進めながら、対外的発表に向けた作業を並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、現地調査やアルバイト雇用等に困難が生じ、予定通りの執行ができなかった。よって、事業期間を延長し、社会情勢を踏まえて、遠隔地からでも実施可能な新たな資料収集体制の構築と研究計画の再検討を行う予定である。 具体的には、物品費残額約40万円は遠隔体制を整えるための機器整備に使用したい。旅費は使用困難である可能性が高いため、物品費や謝金等に流用する予定である。謝金約25万円は労務管理が必要なアルバイト雇用ではなく、遠隔で業務を委託し謝金や委託料として支出する。その他は、遠隔地からの複写資料取り寄せなど、郵送費にも積極的に使用する。
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