研究課題/領域番号 |
19K23556
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
吉江 俊 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60844248)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ジェントリフィケーション / 大都市圏 / 公共介入 / 再開発 / 格差 |
研究実績の概要 |
2019年度は、ジェントリフィケーショケーションの海外諸研究の整理を踏まえ、海外事例と日本の大都市におけるジェントリフィケーションの違いを、専門家との複数回にわたる討議で検討した(成果は、申請者がゲスト編集委員を務めた日本建築学会の月刊誌『建築雑誌』の2つの対談企画にまとめられた)。 さらに、実際に首都圏・中京圏・近畿圏の3大都市圏におけるジェントリフィケーションの進行をGIS(地理情報システム)によって詳細に可視化する技術を開発し、各都市圏の進行度合いを比較した。これにより、首都圏では総じて都市の高級化が生じており、中京圏では同心円状の構造をもつジェントリフィケーションの進行、近畿圏ではモザイク状に高級化と低級化が同時進行していることを明らかにした(成果は、『建築雑誌』巻頭論考『ジェントリフィケーションの巨視的観察 』として掲載された)。 同時に、都市再開発や再再開発といった大規模開発の事例を網羅的に採集し、その開発経緯や従前・従後の様子の把握などを行った。 以上のことから、当初予定していた「研究課題1)ジェントリフィケーションの網羅的把握」と「研究課題2)民間開発に対する公共介入の類型論」は、概ね完了したといえる。 副次的な成果として、都市再開発に伴うニュータウンの変貌についての共同研究を行い、日本建築学会計画系論文集(査読付きの学術誌)に掲載されるなど、4つの査読付き論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究業績で記したように、2019年度中に取り組む課題として予定していた「研究課題1)ジェントリフィケーションの網羅的把握」と「研究課題2)民間開発に対する公共介入の類型論」は、概ね完了したといえる。 加えて、公共介入の代表のひとつである都市再開発について網羅的な調査を行い、都心部におけるマンションの付加価値化の実態や、郊外ニュータウンの多様化といった実態を把握する共同研究を展開し、前者は査読投稿準備中、後者は「千葉ニュータウン開発の変遷と非居住施設の出現プロセス 開発経緯についての証言と物理的環境変化の分析を通して 」として査読付き学術誌に掲載済みである。 さらに、再開発を主題としたシンポジウムを企画中であり、2020年度には想定以上の成果を上げる準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、ジェントリフィケーションの進行と地域の変貌に関するより詳細な調査を行いつつ、行政の役割(公共介入)の評価をおこなう。そして、「研究課題3)民間開発に対する公共介入の評価」をまとめあげ、研究成果を踏まえて「多様性を保持した民間都市開発に向けた公共介入の計画手法」についての提言を行う。 研究過程では、コロナウィルスの流行による影響で、副次的に行うことも検討していた自治体職員へのヒアリングや、屋外空間の利用実態調査などは行いにくい懸念がある。これについては2020年夏ごろまで様子を見、困難であれば対面ヒアリングを行わない調査で公共介入の評価を行うことも検討する。自治体職員へのアンケートやメールインタビューを行ったり、空間整備を検討する過程の議事録を参照するなど、代替の方法はいくつか考えられるため、研究に大きな支障はないと考えられる。
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