2020年度は、前年度に行った首都圏・中京圏・近畿圏の3大都市圏におけるジェントリフィケーションの進行分析をもとにして、都市開発の方向性を探り、民間企業の役割と公共介入の可能性を整理した。 研究構想当初は、都市再開発における自治体の役割に焦点を絞るつもりであったが、新型コロナウィルスの流行を受けてオンラインで専門家のネットワークを形成することができ、再開発事業を得意とする株式会社アール・アイ・エー、小さな取り組みの積み重ねでエリアの価値を高める事業に取り組む有限会社ハートビートプラン、大学と共同で様々な実践を重ねるアーバンデザインセンター大宮など、様々な実践者たちと研究体を立ち上げた。ここでは行政主体の再開発に絞られない広義の用語として「都市再生」を用い、それらの評価指針を討議した。最終的に成果は「都市再生は何のため?」と題するシンポジウムに結実し、そこで「都市の選択多様性を形成する」「パブリックライフを営む主体を育てる」「コレクティブ・インパクトにより持続的な価値を形成する」などの論点と手法を提示した。 以上のことから、前年度に完了した研究課題1,2に続き、「研究課題3)民間開発に対する公共介入の評価」は、概ね完了したといえる。 副次的な成果として、都市開発において残すべきポテンシャルを有する土地や建物に関する研究、都市が包摂すべき多様な人びととそれらを分断する社会的通念に関する研究などを進め、日本建築学会計画系論文集(査読付きの学術誌)に掲載されるなど、6つの査読付き論文を発表した。
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