2020年度は,①セメント硬化体等の吸水速度に与える中性化の影響を明らかにすること,②中性化したモルタルにおける水分変動データの取得を主な目的として実験を行った。 1.セメント硬化体等の吸水速度に与える中性化の影響評価 普通ポルトランドセメントおよび高炉セメントを用いて試験体を作製し,中性化前後の吸水速度係数の比較を行った。試験体は,昨年度の試験結果を踏まえて水セメント比は1水準とし(0.6),セメントと骨材の体積比は2水準(5:0および2:3)とした。また,吸水速度係数の測定については,前処理として50℃/60%RHにおいて乾燥を行ったうえで一面吸水試験を行い,得られた質量変化曲線から吸水速度係数を算出した。実験の結果,中性化前の試験体の吸水速度係数は,高炉スラグの含有量が多い方が,骨材の体積比が大きい方が小さくなることが確認された。一方,中性化した試験体においては,いずれの試験体も吸水速度係数が上昇した。また,モルタルにおいては,中性化前の吸水速度係数は調合ごとに異なっていたにもかかわらず,中性化後の吸水速度係数は調合によらずほぼ同程度の値となった。上記のような傾向を示した原因については,水和生成物の炭酸化や空隙構造変化,微細ひび割れの発生など様々な要因が考えられ,今後関連する物性値等を取得したうえで検討を進める。 2.中性化したモルタルにおける水分変動データの取得 内部に温湿度センサー等を埋設したモルタル試験体を作製し,中性化を開始した。本研究の期間内では十分な深さまで中性化が進行しなかったため,今後中性化の進行度合いを見極めつつ必要な測定を継続する。
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