本研究は、近現代建造物の文化財としての保護が現代社会の普遍的な営為として受容される諸条件を解明することを目的とした。はじめに、行政制度上の報告や施策、言説等から考察を行い、文化財の存立の根拠となる価値評価と保存の実践である文化財建造物の修理の間に業態的な分断があり、新しい文化財類型である近現代建造物では価値評価の方向と保存修理の方法が必ずしも整合していないことを示した。つぎに、近年のリノベーションの事例に注目して現在の一般的な建築行為における近現代建造物の価値の捉え方や改変の考え方を考察し、改修設計者に共通する近現代建造物に特有の価値評価や、その保存のための方法論が存在することを明らかにした。
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