研究課題/領域番号 |
19K23569
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
品川 竜也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90850222)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 電極触媒 / 水分解 / 水素 / 再生可能エネルギー / 電解質 |
研究実績の概要 |
持続可能な社会の構築に向けて再生可能エネルギーの導入が進む中、その中核技術たり得る次世代型水電解による水素製造装置の開発が急務である。本研究課題では、過酷なpH条件で操業される従来型水電解に比較して、コスト・安全上の懸念を払拭し得、分散型利用が可能であり、さらに他の要素技術との親和性が高い「中性pH駆動水電解」に関する検討を行う。本年度は、中性pHにおける電解質水溶液の物性、とくに1.0 Mを超える濃厚電解質溶液物性の物性評価に取り組んだ。まず実験環境の構築に取り組み、ポテンショスタットによって種々の温度条件下で溶液物性を測定できるよう整備した。当該装置などを用いて、とくにリン酸塩等から構成される電解質水溶液を対象に、その電気伝導度および水溶液粘度を様々な温度および濃度範囲で実測した。また、その測定結果を踏まえてイオン径や活量等の物性を定量的に評価した。実験で得られた実測値を既存モデル(例えば、Stokes-Einsteinモデルなど)からの推定値と比較し、昇温・高濃度条件における従来モデルの適用限界について議論した。最終的には、溶液物性の理解に基づき、水の電気分解反応に係る物質移動速度を最大化し得る条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機器の導入および実験環境の整備を完了し、電解質水溶液物性、具体的には電気伝導度や粘度を、種々の温度および濃度域において測定した。得られた結果から物質移動速度等を定量的化し、水電解に用いる電解質溶液の最適化に係る指針を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を基に、水電解に用いる電解質の最適化およびそれを用いた中性pHにおける水電解装置の実証試験を実施する。白金やイリジウムといったモデル電極を用いて試験を行い、既存の水電解装置性能との比較を行う。そこでの課題を抽出することで、中性pHにおける水電解装置のボトルネックを明らかとするとともに、異種イオンの導入などによる溶液のさらなる最適化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたが、帳尻を合わせるためにこの未使用額を用いて物品を購入するのではなく、これを次年度に繰り越して有用物品の購入に充てたほうが、税金を財源とする研究費の有効活用に良いと考えたため。
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