本研究計画では新奇に作製したグラファイトグリッドを試料支持に用いることが根幹にあり、試料の熱処理前後においてナノサイズプローブによる構造解析を行ない、有機物の炭素化および黒鉛化過程の構造変化を追跡するのが目的である。グラファイトグリッドはレーザー微細加工技術によって作製し、任意のグリッドパターンを形成することが可能である。本年度は炭素化および黒鉛化をトラッキングするためのグラファイト製透過型電子顕微鏡用グリッドの耐久性の評価を主として行なった。グラファイトグリッドは2000℃までの熱処理に対して十分な耐久性を有しており、熱処理後の透過型電子顕微鏡による観察においても問題が無いことが明らかとなった。このため試料の同一箇所における炭素化および黒鉛化の初期過程が各種構造解析手法によって分析可能なことが明らかとなった。しかしグリッド間隔が広すぎるため、試料が落下してしまうことが明らかとなったため、試料保持材として垂直配向カーボンナノチューブを使用した。垂直配向カーボンナノチューブは平行に引き出すことによって簡便に多孔質のフィルムを作製することができるため、グラファイトグリッド上に架橋させることによって試料の脱離を防ぐことが出来ると考えられる。垂直配向カーボンナノチューブもグラファイトグリッドと同様に2000℃までの熱処理に対して切断や変形、分解と言った構造変化が見られなかったため、十分な耐久性を有していることが明らかとなった。
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