有機材料の炭化・黒鉛化プロセスについて,難黒鉛化炭素前駆体であるセルロースを用いて再検討した.グラファイト製のグリッド上にゲル状のセルロースを滴下し,3000℃までの高温で熱処理を行った.透過型電子顕微鏡を用い300℃毎に同一箇所を観察した結果,セルロースは始め炭素殻でできた泡状のセル構造を形成し,熱処理温度の上昇に伴ってこのセルは直径が大きくなり,殻部は厚みを増していった.更なる熱処理温度の上昇に伴ってセルの数は減少し,予想に反してセルロースは高温で結晶性の高い,グラフェン様の平面構造を形成した.これよりセルおよび炭素殻の空間的配置が最終的な炭素・黒鉛の構造を決定していることがわかった.
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