研究課題/領域番号 |
19K23574
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平出 翔太郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (60853207)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 吸着等温線 / 高精度測定 / 真空 / リーク |
研究実績の概要 |
低圧下での吸着測定精度に多大な影響を与えているサンプルセル内の圧力上昇の原因を特定し,然るべき手段でそれら外乱の寄与を無効化ないしは補正することで,高精度な吸着等温線測定を可能とするのが本研究の目標である。圧力上昇の要因としては,①サンプルセルと装置本体の接続部からの外気侵入(リーク),②系の壁面に吸着していた気体分子の脱着,③サンプル内部からのガス放出が考えられ,②,③は適切な温度・真空度における前処理により無効化,①については,吸着測定の経時データに対する解析・補正によりその影響を理論的に排除可能なはずである。すなわち,②,③の要因を除去するのに必要十分な前処理方法を明らかとすることが,本研究で達成すべきことであり,本年度は,圧力上昇値に占める①-③の寄与を分解可能な装置開発に着手した。調書提出段階では,サンプルセル接合部の外環境を真空にすることでリークの寄与を限りなくゼロとする装置を思案していたが,交付申請書に記載した通り,それ以上の検討が四重極型質量分析計(QMS)によって可能となるはずである。そこで吸着装置とサンプルセルの間にT字ユニオンをかませることで,サンプルセルにおける圧力上昇の要因となっているガスをダイレクトにQMSで測定可能なシステムを開発した。まずは,サンプルを封入せずに,ブランクセルについて圧力上昇速度とその要因ガスを調査した。加熱処理前では,10^-1 Pa/minのオーダーで上昇しており,その要因はほぼH2Oであることが分かった。一方,セル全体を100℃,2 hで真空加熱処理したところ,圧力上昇速度は10^-3 Pa/minまで減少したが,依然としてH2Oが主要素として検知されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検出方法を四重極型質量分析計(QMS)に変更したことで,圧力上昇がどのガス種によって生じているかが明確に判別できるようになった。これは,調書段階での想定装置と比して大きな進歩であり,本年度は,吸着測定装置とQMSを接続したシステムの構築およびそのシステムを用いた測定に成功した点で大いに研究が進展したと言える。一方で,この進捗ペースであればもっと多くのデータを取得できるはずであったが,吸着測定装置自体に不具合が見つかり,年明け以降は修理のため研究が遂行できなかった。研究計画に照らし合わせれば進捗に遅れこそないものの,悔やまれる一件である。なお,吸着測定装置はR2年4月に修理を終えており,研究継続に支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
開発した吸着測定装置とQMSを組み合わせたシステムにより,壁面脱着およびサンプル内部からのガス放出が生じなくなる前処理条件を追求する。具体的には,まずサンプルを封入しないブランク条件において前処理温度・時間を変化させ,壁面脱着の主成分であるH2Oのピークが生じない(空気でのピーク強度以下)になる条件を探索する。その条件をもとに,サンプル封入時においても同様の検討を行い,圧力上昇させているガスが空気組成になる条件を決定する。その条件において,吸着等温線測定を行い,リークによる寄与を理論的に排除する解析を実施し真の吸着等温線を得る。対象サンプルは,まずはY型ゼオライトを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
吸着測定装置の修理に伴い研究が一時ストップしたため,物品の購入に一部遅れが生じた。使用用途自体に変更はないため,研究が再開し次第,物品の購入を行っていく。(R2.4.27に修理は完了している。)
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