研究実績の概要 |
低圧下での吸着測定精度に多大な影響を与えているサンプルセル内の圧力上昇の原因を特定し,然るべき手段でそれら外乱の寄与を無効化ないしは補正することで,高精度な吸着等温線測定を可能とするのが本研究の目標である。本年度は,昨年度開発した自動吸着装置と四重極質量分析計からなるシステムをより安定した測定ができるように改良し,ブランクセルに対するリーク測定と,Y型ゼオライト(HSZ-320HOA,東ソー)を封入した際のリーク測定を比較することで以下の結果を得た。①ブランクセルにおいて,圧力上昇の主な要因はAirのリークである。②CO2およびH2Oも圧力上昇の原因として検知されるが,真空排気の時間を長くするほどその寄与は小さくなる。③昇温によりCO2およびH2Oの除去効率はわずかに上がるが,排気時間を伸ばす方が有意に影響しており,例えば,ターボ分子ポンプによる真空排気20時間では,加熱(400℃)の有無による差異はほぼ見られなかった。④ゼオライト封入時でもAirが圧力上昇の主要因である事実に相違はなかったが,加熱(400℃)の有無により結果が少し異なり,非加熱では圧力上昇の要因としてCO2,H2Oが検出されたものの,加熱条件ではほぼ検出されなかった。これらの結果から導かれる結論は以下の通りである。(A)吸着測定において,圧力上昇として見えているもののほとんどがAirのリークによるものであるため,本研究課題で提案した,非吸着質として圧力トレンドからそれらの分圧を解析することで吸着量,平衡圧を補正する方法は有効である。(B)真空容器内でのアウトガスであるCO2, H2Oはゼオライトに吸着されてしまうため,吸着測定に少なからず影響を与え得る。それを防ぐためには高温,低真空下での前処理を数日というスパンで実施することが有効であり,一般的に行われている数時間の前処理では不十分である。
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