研究課題/領域番号 |
19K23577
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤崎 貴也 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 学術研究員 (30846564)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | プロトン伝導体 / 透過型電子顕微鏡 / 密度汎関数理論 / クラスターエクスパンション・モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
燃料電池の電解質に応用可能なプロトン伝導性酸化物(プロトン伝導体)の物性を原子スケールから理解するためには、コンピュータを使った理論的研究手法が欠かせない。上記の研究手法で研究者コミュニティーの間で半ば常識となっている次のことに申請者は疑問を持っている。それは、「原子配置に依存したプロトン伝導体の格子エネルギーが理論計算で最小であれば、その原子配置は実験的にも再現されるべきである」との共通認識である。疑問に思った理由は、申請者のこれまでの研究で、上記を満たすプロトン伝導体を用いて理論計算を行ったところ、実験事実と相容れない結果が得られたためである。本研究では、複数のプロトン伝導体の原子位置の実験的な決定を行い、更にその位置情報を基に密度汎関数理論(DFT)もしくはクラスターエクスパンション・モンテカルロ(CEMC)法を用いて格子のエネルギーを算出する。上記により、プロトン伝導体の理論計算のための適切な格子のエネルギーを取得を目指す。 今年度では、申請者はイリノイ大学アーバナシャンペーン校に約一か月間滞在し、上記のクラスターエクスパンション・モンテカルロ(CEMC)法を用いて、有限温度でのプロトン伝導体の原子配置の理論計算を行った。その結果、当初の予想通り、ドーパントがクラスターを作っていないことが理論的に明らかとなった。プロトン伝導体内のドーパントの位置を理論計算と実験事実の両面から明らかにすることが本研究の目的であり、上記のCEMCの結果はその一端を支持する結果であり、本研究を進める上で重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、申請者はイリノイ大学アーバナシャンペーン校との共同研究で、クラスターエクスパンション・モンテカルロ(CEMC)法を習得した。その結果、当初の予想通り、ドーパントがクラスターを作っていないことが理論的に明らかとなった。プロトン伝導体内のドーパントの位置を理論計算と実験事実の両面から明らかにすることが本研究の目的であり、上記のCEMCの結果はその一端を支持する結果であり、本研究を進める上で重要なものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、プロトン伝導体のドーパントの位置を実験的に明らかにすることを目標に研究を行う。現在、COVID-19による影響で、上記を実施するための国内外の研究施設の利用が停止されており、その影響が無くなり次第、速やかにドーパントの位置を実験的に明らかにする。具体的な方法としては、イオンミーリングにより薄膜化したプロトン伝導体を透過型電子顕微鏡により、原子の濃淡差からドーパントの位置を割り出しを行う。 また、前年度に取得したCEMC法を前年度に適応できなかったプロトン伝導体の組成にも適応し、ドーパントの位置と格子エネルギーのダイアグラムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーション結果のデータ整理としてUSBメモリの購入を考えていたが,今年度は使用せず、次年度に回すことにしたため。
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