研究実績の概要 |
1. ASTM F90 Co-20Cr-15W-10Ni合金(mass%, CCWN合金)をベースとして、MnおよびSiを添加した合金を作製し、MnおよびSi添加がCCWN合金の析出挙動に与える影響を明らかにした。Mn添加によってM23X6型析出物(M: 金属元素、X: C and/or N)の形成が抑制された。Mn添加量に関わらず、Si添加により析出物量が増加した。さらに、1mass%のSiを添加した場合には、CoWSi型ラーベス相が形成した。CoWSi型ラーベス相の形成は、CCWN合金の微細組織に関する研究において過去に報告されておらず、本研究において初めて確認されたものである。 2. MnおよびSiを添加したCCWN合金熱間鍛造材に対して、冷間加工および再結晶化熱処理を施し、MnおよびSi添加がCCWN合金の再結晶挙動および結晶粒成長挙動に与える影響を調査した。Si添加材は、CCWN合金市販材と比較して熱処理時の再結晶進行速度および結晶粒成長速度が遅いことが明らかとなった。これは、Si添加によって形成されたCoWSi型ラーベス相の影響であると考えられる。 3. MnおよびSiを添加したCCWN合金の機械的特性を調査した。Mn添加により延性が向上し、Si添加により強度が向上した。しかしながら、過剰なSi添加は、CoWSi型ラーベス相形成による延性低下の要因となることが明らかとなった。Mnのみを添加したCCWN合金においては、塑性変形初期から中期にかけて加工硬化率が上昇する塑性変形挙動を示した。これらの、CCWN合金におけるMn添加は、高強度・高延性・低降伏応力の共立が求められる次世代高性能バルーン拡張型ステント用金属材料の設計指針として有力であると考えられる。 4. 本研究課題の成果について、論文を1報報告した。
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