Cu2+イオンをキレート化し、負の電荷をもつ錯イオンとすることによりステンレス鋼表面に生じるすき間部へ導入し、導入されたCu2+イオンがすき間腐食の発生に及ぼす影響を調査した。すき間内部へ導入されたCu2+イオンが腐食抑制作用を発揮することや、Cu2+イオンが鋼中から溶出した元素と反応し、保護性をもつ皮膜を形成することですき間内部での鋼の溶解を抑制し、すき間腐食の発生を抑制することが期待される。本研究では、Cu2+とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で錯体を形成させたエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅(II)([Cu(EDTA)]Na2)を含む水溶液中でのステンレス鋼のすき間腐食試験を行った。腐食した試験片を分析する際には、ステンレス鋼の溶解に伴うCu2+の溶出と、キレート化によりすき間外部から導入されたCu2+を明確に区別する必要がある。そのためには、ステンレス鋼からのCu2+の溶出を抑制することが望ましい。そこで、Cu含有量を0.01 mass%に調整したSUS 316Lステンレス鋼を試験片として、0.1 M NaClおよび0.1 M NaCl-0.01 M([Cu(EDTA)]Na2)溶液中ですき間腐食試験を行った。定電位分極試験によってすき間腐食発生電位を比較した結果、[Cu(EDTA)]Na2の溶液中への添加によってSUS316Lのすき間腐食発生下限界電位は上昇し、すき間腐食の発生が抑制されることが分かった。
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