研究課題/領域番号 |
19K23584
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
豊田 耕平 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (40740212)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 光の角運動量 / ソフトマテリアル / 光渦 / 非線形光学 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体組織のシミュレータとして着目されるハイドロゲルと、光の角運動量の相互作用を可視化することで、生体組織の捩じり応力などのこれまで計測困難であった動力学パラメータの測定することを目的とする。本年度では、ハイドロゲルとしてPEGDAを用い、塩化金溶液によって金イオンを添加し、軌道角運動量を持つ光である光渦とハイドロゲルの相互作用を可視化することを目指した。 ピコ秒オーダーの短パルスレーザーを光源として用い、発振したガウス光を螺旋型位相板によって光渦に変換し実験に用いた。光渦、およびガウス光を対物レンズによって、金イオン添加ハイドロゲルに集光し、二光子吸収過程による光還元反応を誘起した。散乱光および透過光の経時変化を、ハイドロゲルの側面および透過方向に設置したCCDカメラによって測定し、金析出過程のダイナミクスを観測した。導波路形成過程での透過光測定では照射直後、光渦の円環状強度分布が分岐し、角運動量に応じてねじれていく様子が確認できた。ガウス光では発散した。これは金の屈折率が負であることに起因していると考えられる。側面からの観測では、光渦が自己集束しながら伝搬し、金微粒子が導波路形成していることが分かった。このことから金ナノ微粒子は光の角運動量を受けとりながら、ゲル内部で運動し、凝集、析出することがわかった。 今後、析出過程における金微粒子と光の角運動量の相互作用をより詳細に解析することと並行し、ねじれ応力の測定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイドロゲルとしてPEGDAを用い、塩化金溶液に浸すことで、金イオンハイドロゲルを作製した。ピコ秒オーダー光渦レーザーを金イオン添加ハイドロゲル内部に集光することで、光は自己集束し、導波路として金が析出することを確認した。この際、透過光、また側面から、金析出過程のダイナミクスをCCDカメラによって観測し、光渦の円環状強度分布は回転しながら分岐し、軌道角運動量に応じた捩じれた金導波路が析出することを発見した。 この現象はガウス光では確認できなかった。 これらは本年度の目標であった、光の軌道角運動量とハイドロゲルの相互作用を可視化に成功したことを意味している。
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今後の研究の推進方策 |
斜方入射による干渉縞のリング数によって複屈折を測定する応力分布を確認する光弾性法を用いて、捩じれた金導波路形成を行ったハイドロゲルのねじれ応力分布の測定を行う。 また照射する光の角運動量とねじり応力との関係を測定することで光の角運動量と生体組織の力学的相互作用を解析する。
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