本年度では、(1)界面活性を利用した網羅的な単一粒子検出と機械学習解析を融合し、微粒子を電気的に識別した。粒子組成と信号形状の相関解明に向けて、(2)酸化物粒子表面上への自己組織化単分子膜(SAM)の形成法も確立した。さらに、(3)単一チップ上への捕集部と単一検出部の融合も実施した。 (1)では、電気信号の形状を定量し、機械学習解析することで、電気的に微粒子を識別した。界面活性剤の添加は、分散安定性の低い粒子(ポリスチレン(PS)粒子、表面:PS)を計測可能にした。同様に、COOH基表面のPS粒子に対しても、電気信号を取得した。従来的な信号パラメーター(波高、波幅)では、プロットの重なりのために識別は困難であった。信号形状を多次元パラメーター(波高や波幅、クリアランス率、波形率など)として定量し、機械学習元解析したところ、単一信号を精度98.4%で識別した。さらに、無機粒子モデルとしてシリカ粒子(未修飾、アルミナ膜)の電気信号も加えても、4種類粒子を精度99.1%で識別可能であった。 (2)では、表面官能基に起因した信号形状変化の解明に向けて、酸化物粒子表面にSAMを修飾した。粒子状物質は多様な表面組成を示すため、各組成に対する信号形状の探索が求められるが、実試料はサイズや粒子形状も均一でない。そこで、長鎖やCOOH末端のアルキル鎖を有するSAMを利用して、表面官能基を制御したモデル粒子を創製した。赤外分光法を用いて各官能基由来のピークを確認し、粒子上へのSAM修飾に成功した。 (3)では、単一チップ上への集積化のために、捕集のためのナノ構造体と検出のためのポア構造体の作製プロセスを最適化した。集積化チップを用いて、気相中の粒子状物質の実試料(都市大気粉塵、国立環境研究所)を溶液中に捕集し、下流のポア構造体によって当該粒子を電気的に単一検出した。
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