本年度は昨年度に引き続き、分子の鏡像異性体過剰率による分子集合体の形状制御について検討した。 鏡像異性体過剰率を100%から徐々に低下させることで、得られる分子集合体の形状がねじれたリボン状、チューブ状、平板状と変化したが、どの条件においてもそれらの混合物が得られた。調製時の温度や各化合物の濃度について詳細に検討したところ、各形状の分子集合体が得られやすい条件についてはある程度明らかになったものの、チューブ状および平板状については100%選択的に調製することはできなかった。 また、本年度はらせん状金ナノワイヤーの長さの制御と光学特性の変化について検討した。昨年度は合成時の還元速度を調節することでワイヤーの直径および長さの制御を達成した。しかし、この方法ではワイヤー径の増加と同時にワイヤーの長さが減少するため、ワイヤーの直径と長さを別々に制御することが困難であった。そこで、極細の金ナノワイヤーに超音波処理を施すことで、ワイヤー径を変化させずにワイヤーの長さのみを制御できるか検討した。 超音波処理によりワイヤーの長さは1/10程度に減少したが、直径は3 nmからほとんど変化しなかった。処理の方法によってはワイヤーの凝集、沈殿がみられたが、ワイヤーの濃度、処理の際の温度、添加剤について検討し、分散安定性を保ったままワイヤーの長さおよびアスペクト比を低下させることに成功した。 得られたナノワイヤーの分散液について、吸光スペクトルを測定したところ、近赤外領域において若干の変化がみられた。この結果はワイヤーのアスペクト比の低下による吸収帯のブルーシフトが原因と考えられる。さらなるアスペクト比の制御により、より顕著な変化を見出すことができると考えている。
|