本研究では、ウイルスを高感度かつ迅速に検出するため、シリコンナノワイヤ(SiNW)バイオセンサの構造最適化により、サブaM感度のバイオセンサシステムの創製を目的とする。2021年度は、幅10 nm以下のSiNW作製条件の調査、P型とN型SiNWセンサの作製と検出感度の比較を中心に研究を進めた。コロナ禍の影響で一定期間の東京大学の設備が使用出来なかったため、最終目標とするウイルスの検出までに至らなかったが、センサの検出感度に影響を及ぼす要素がある程度明らかになった。以下に得られた成果を示す。 (1)細線化 SiNW作製条件の調査:幅10 nm以下のSiNWを作製するため、電子線描画及び反応性イオンエッチングの設定条件を検討した。その結果、NWの設計幅、露光条件を調整することで、幅13~14 nmのHSQレジストNWが形成できた。また、反応性イオンエッチングのパワー、反応ガス流量、エッチングレートを制御することで、幅11~14 nmのSiNWが形成できた。 (2)P型SiNWセンサの試作とトランジスタ(FET)特性の測定:P型SOI基板を用いて、前述のプロセスで幅13 nm~80 nmのSiNWバイオセンサを試作した。異なる幅のP型センサのFET特性を測定したところ、負方向のゲート電圧の増加に伴い、チャネル電流の増加が確認できた。そして、NW が細いほど電流変化率が大きくなることが確認できた。 (3)P型とN型SiNWセンサ検出感度の比較:幅42 nmのP型センサを用いて、アルブミンの検出実験を行った。低濃度のアルブミンでは、電流変化が見られなかったが、100 fM ~100 nM の濃度で抵抗変化率の連続的な減少が得られた。電流変化率と濃度の依存性結果を以前実施したN型センサの実験結果と比較したところ、N型センサの検出感度はP型センサより高いことが確認できた。
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