本研究の目的は、成人期扁平足とよばれる病的な足部変形疾患について、重症度や変形矯正手術の治療効果を定量化するための新規デバイスを開発することである。3次元方向の力学量を計測可能なセンサを、インソール上に配置した靴型デバイスを開発し、歩行中の足底圧・剪断力による定量化を試みた。成人期扁平足患者での計測に最適化するため、第一中足骨頭、第一中足骨基部、第五中足骨頭、第五中足骨基部、踵部の5か所にセンサを配置して、アプリケーションの最適化を行った。 患者群での計測の前に、開発デバイスの再現性を評価するため、健常者7名を対象とした評価を行った。10m平地歩行を10試行、48時間以上経過後に再度10m平地歩行を行った。各歩行周期におけるセンサ値の最大値と最小値の差を級内相関係数(ICC)を用いて評価した。第一中足骨頭部を除き、鉛直方向・前後方向の測定値について、十分な再現性(ICC>0.7)がみられたが、内外側方向の測定値については、再現性がみられなかった。 さらに、変形矯正手術を予定している、成人期扁平足患者3名、健常者2名での測定を行った。第一中足骨基部(土踏まず)における鉛直方向の力学量について、歩行周期における最大値は、健常者に比べて大きい傾向にあった。成人期扁平足における、土踏まずの消失が影響していると考えられる。現在、統計学的に比較が可能な被検者数に達していないため、今後成人期扁平足術前患者、健常者における計測を継続し、レントゲン上の指標との相関を検討する予定である。
|