研究課題/領域番号 |
19K23603
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村山 敦彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (90844457)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | PHA / 生体適合性 / 高伸張性 / 生分解性 |
研究実績の概要 |
(1)試験管内における実験 滅菌した新規PHAを用いた多孔性医療機器サンプルをpH 7.4、37度のリン酸緩衝生理食塩水で一定期間培養したのちに取り出し、その伸展性や強度が初期値に比してどれほど残存しているかを確認した。結果、3か月が経過した時点で伸展性はおよそ70%、強度はおよそ50%を維持していた。 (2)生体内における実験 滅菌した同サンプルをラットの背部皮下組織に一定期間埋植したのちに取り出し、その構造を肉眼的及び走査性電子顕微鏡的に観察した。また組織学的評価や力学的評価も行った。結果、埋食後5か月の時点で肉眼的には初期形状を維持しており、周囲の組織との癒着は軽度で明らかな感染徴候は認めなかった。また、走査性電子顕微鏡で微細な亀裂やクレーター状変化を認めたが、大きな構造的欠損は認めなかった。このことから、本サンプルは少なくとも5か月間は生体内で吸収されない中・長期的な生分解性を持つことが確認できた。また組織学的評価としてHE染色を行ったが、現存する他の生体吸収性医療材料と比して、炎症の程度が小さく、線維性肥厚や細胞壊死の程度も非劣性であった。本サンプルの強度や伸展性が生体内でどれほど維持できるかは現在解析中である。以上より、新規PHAを用いた多孔性医療機器サンプルは試験管内において比較的強度や高い伸張性を維持できるということがわかった。また、生体内にいて適合性が高いこと、中長期に渡って貪食されず初期形状が維持されることから、安全性という点で現存する医療デバイスより優れている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規PHA多孔性医療デバイスのサンプルを作製し、その有用性や安全性をin vitroおよびin vivoの実験系を用いて検証できているから。臨床応用を目指した開発のファーストステップとしての位置づけであり、スピード感を持って更なる客観的なデータの蓄積が重要である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の新規PHAを用いた多孔性医療機器サンプルの問題点として、サンプルの形状が部位によって異なること、サンプル毎に孔の数や大きさが異なることが挙げられる。今回の研究成果を共同研究機関にフィードバックすることで、形状や多孔構造の均一化や再現性の向上を実現し、最終的に製品となるサンプルの品質を高めていく必要がある。その上で、このサンプルに対して改めて非GLP下の生物学的安全性評価やin vitro/in vivo の統計学的な定量評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月中旬より生体内実験に用いる実験動物や新たな物品の購入を計画していたが、新型コロナウイルス流行による影響のため、現在実験動物の搬入ができない状況である。また出張が制限されており、2月下旬以降に予定されていた国内・国際学会はWEB開催への変更や延期が相次いでいる。したがって、旅費として予定していた支出もなくなった経緯がある。今後はWEB会議やリモートワークに要する新たな物品の購入を考えており、世の中の情勢を見ながら適宜柔軟に実験計画を変更していく必要があると考える。
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