研究課題/領域番号 |
19K23603
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村山 敦彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90844457)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | PHA / 生体適合性 / 高伸張性 / 分解性 |
研究実績の概要 |
新規PHAを用いた軟部組織再建用の医療機器の開発を目指し、前年度はその元となる繊維状三次元構造サンプルにおける(1)分解性・吸収性、(2)生体適合性、(3)強度等の残存率をin vivo/ in vitroで調査した。その結果、本サンプルは(1)ラット背部皮下組織において少なくとも1年間は完全には吸収されずに残存することから、緩徐な生体吸収性を持つこと、(2)肉眼的にも組織学的にも有害事象を認めないことから、優れた生体適合性を持つこと、(3)生体内において中長期の強度と伸縮性を維持できることがわかった。しかし、本サンプルの形状や物性が均一性に欠け再現性が乏しいことが課題として挙げられた。そこで、私が所属する研究チームは昨年度、原料となるPHAの精製において分子量の大きさを一定範囲内に統一し物性を安定化させることに成功した。また、繊維状構造を加工する過程において、様々なパラメータを変化させトライアンドエラーを繰り返すことで均一な形状や物性をもつ最適なサンプルを作成することに成功した。今後は、このバージョンアップしたサンプルにおけるGLP下の生物学的安全性(生体適合性)、分解吸収性、強度等の残存率をin vivo/in vitroで試験していくとともに、この繊維状構造体を立体的に編み込んだり、別の材料から成る構造体と組み合わせることで、伸縮性を持った索状物、膜状構造体あるいは管状構造体などを構築することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、新規PHAを用いた軟部組織再建用の医療機器の開発を目指し、その元となる三次元構造サンプルにおける(1)分解性・吸収性、(2)生体適合性、(3)強度等の残存率をin vivo/ in vitroで調査することであった。その点では、研究の進捗状況に極端な遅れはないと言える。しかし、新型コロナ肺炎の流行の継続に伴い、研究開発のいくつかのフェーズで遅延が発生している。また、名古屋大学動物実験施設の老朽化に対して、2021年7月に新棟完成、同年7月下旬から8月下旬に旧棟から新棟への引っ越し作業、同年9月から旧棟の改修工事の開始が行われた。結果として、ラットを用いた実験は2021年7月で一旦打ち切り、新棟での新たな実験系が組みにくい状況であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、昨年度の課題であった新規PHAから成る繊維状構造サンプルの均一性や再現性を高めることに成功した。今後の研究としては、このバージョンアップしたサンプルにおけるGLP下の生物学的安全性(生体適合性)、分解吸収性、強度等の残存率をin vivo/in vitroで試験していくとともに、この繊維状構造体を立体的に編み込んだり、別の材料から成る構造体と組み合わせることで、伸縮性を持った索状物、膜状構造体あるいは管状構造体などを構築することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も新型コロナ流行の影響から出張が制限されており、2021年4月以降に予定されていた国内・国際学会は概ねWEB開催である。したがって、旅費として予定していた支出や会議室借用費等がなくなった経緯がある。2022年度は追加試験として組織の病理検査(外注)や複数の学会発表を予定しており、それらの経費に充てる。しかし、依然としてWEB会議やリモートワークを余儀なくされることが予想されており、世の中の情勢を見ながら適宜柔軟に実験計画を変更していく必要があると考える。
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