病的胎盤に起因する早発型の重症妊娠高血圧症候群や胎児発育不全の児の予後は不良である。応募者は胎盤機能不全に対する「人工胎盤移植による胎盤機能再生医療」につき研究しており、今までiPS細胞から誘導した絨毛様細胞を用いて立体的胎盤器官芽を作成することに成功した。また絨毛様細胞の誘導日数条件を2日~8日まで2日刻みで検討し、誘導8日目の絨毛様細胞では立体的な器官芽が形成できないことを確認した。これは過期産の胎盤に相当する疾患モデルの可能性も示唆する。また引き続き作成した器官芽を免疫染色し、絨毛細胞のマーカーであるCK7、HLAG、HCGがそれぞれ特徴的な分布を示すことを確認した。引き続き生体への胎盤移植モデルを確立すべく、免疫不全マウスの子宮内への移植実験を行い成功例を得ることができた。しかしながら移植成功率は約20%と決して高いものではない。加えて最終的に目指すのはさらに手技として困難だと思われる胎盤への器官芽移植である。本研究は胎盤機能再生医療を実臨床へ展開するための更なる治験を得ることを目的とした。その概要はヒトiPS 細胞由来の絨毛様細胞を用いた立体的な胎盤の器官芽を作成し、1)作成した胎盤器官芽を超免疫不全マウスの子宮や胎盤へ安定して移植できる手技を確立し、2)その生着および胎盤機能の検証を行い、さらに3)胎盤機能不全モデルマウスを用いて人工胎盤移植により胎盤機能が再生することを明らかにすることである。 計画に基づき研究を進めており、最終年度は以前より希望していたiPS培養の専用の培養を購入し、実験環境の整備を行うことができた。マウスへの移植実験結果については近年中に発表見込みである。
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