膵島移植の成績向上のため、細胞シート工学を用いた皮下移植が研究されてきた。我々は、糖尿病ラットへの膵島/間葉系幹細胞(MSC)複合シート皮下移植での耐糖能改善、MSCの中でも脂肪由来幹細胞(ADSC)の有用性を報告した。一方膵島単体シートでは、マウスで皮下より肝表面移植の方が血糖正常化に優れていたと報告された。しかし、ヒトへの応用を考えた場合、肝表面移植は臨床的には侵襲が大きいと考えられる。膵島/ADSC複合シートであれば、血管新生誘導/ 膵島細胞保護効果により皮下移植でも肝表面移植と同等な成績が期待できると考えた。 糖尿病モデルマウスの作製、共培養シート作製手技、ラット膵島の分離手技の安定化を図っていた。膵臓の消化に用いるコラゲナーゼを注入するため、ラットの胆管へカニュレーションする技術が必要であり、手技獲得に時間を要した。手技が安定したところで膵島分離を行い、動物実験施設でラット膵臓へのコラゲナーゼ(リベラーゼTL)注入、膵全摘などを行い、当科実験室で振盪、ろ過、濃度勾配液を加えての遠心処理等を行って膵島の分離を行った。また、ラットADSCについては専門業者から購入したものを使用した。ADSCが推奨培地で増殖しない問題があり難渋したため、シート作製に移行するまでに時間を要した。培地の変更により、ADSCの増殖を確認でき、シート作製にとりかかった。膵島分離の5日前にADSCを播種して増殖させコンフルにさせた上で、膵島分離を行い、ラット膵島を播種して膵島/ADSCシートの作製を行った。実際に膵島/ADSCシートを糖尿病マウスに移植し続けたが、うまく生着せず、血糖降下作用は認めなかった。
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