我々は、呼吸器分野においてインパルスオシロメトリーシステム(IOS)を用いた診断法について着目しており、中でも慢性気道疾患の診断・治療に有用なツールであることを証明するために研究活動を行なっている。先行研究として、咳喘息に対するIOSによる亜型分類が吸入ステロイド薬(ICS)粒子経による治療効果と密な相関を示すことを報告し(Sugawara et. al. Resp Res 2019)、今回、IOSによる気管支喘息(BA)の亜型分類とICSの治療効果の関連性について、本研究を行った。2017年4月から2019年6月までに初診し、フルチカゾン(FP)、モメタゾン(MF)またはブデソニド(Bud)で治療された108例を対象にした。治療内容としてFPは粗粒子、MFは微粒子、またBudは中程度粒子とし、患者をIOSの予測値から中枢優位型34例、末梢優位型58例、正常圧型16例に分け、その3つの亜型間におけるICS治療効果を喘息QOL調査票(AHQ)と喘息コントロールテスト(ACT)で評価した。 結果は、中枢優位型のAHQは、MF群がFP群とBud群と比較し有意に高く、FP群のACTスコア(治療後4週間)はMF群およびBud群のACTスコアよりも有意に高かった。末梢優位型のAHQは、FP群がMF群に比べ有意に高く、FP群のACTスコア(治療後4週間)はMF群およびBud群のACTスコアよりも低かった。 その結果から、BAのICS治療では、ICSの粒子径とIOS亜型分類が治療効果と関係し、IOSがICSの選択とBA表現型の評価において効果的なツールである可能性があることを示した(Sugawara et. al. Resp Res 2020)。 次研究課題として慢性閉塞性肺疾患(COPD)についても、IOSが肺活量測定よりも早くCOPDに関連する病態を検出する可能性がある考え研究を継続する。
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