本研究では「薬物内包可能な骨誘導能を持つ新規炭酸アパタイト粒子を用いた骨粗鬆症の治療」を目的として実験を行った。主に2020年度は研究実施計画の3つの項目③「pH変化に伴う内包薬物の放出試験」、④「骨芽細胞を用いて、CO3Ap粒子の骨誘導能評価」、⑤「マウスへのCO3Ap粒子インジェクションによる骨再生・形成評価」を行った。 ③では、作製した粒子は薬物の内包が可能であり、骨再生時のpHにおいて薬物を放出することが分かった。さらに粒子のシェルは、低分子薬物を透過して内部にロードし、骨再生タンパク質BMP-2などの高分子量体は透過せずシェル表面に付着することが分かった。この結果から、多種類の薬物を同時に内包・担持し、pHの低下で放出する粒子であることが明らかとなった。 ④では、骨芽細胞のMC3T3E-1細胞と共に培養した。この結果、骨芽細胞から骨細胞への分化後期に発現するオステオカルシンの発現量を測定すると、BMP-2を付着させたカプセルにおいて発現量が増加したことが分かった。これより、骨細胞への分化を可能とする特徴を有していることがわかった。さらに培養時に骨芽細胞に石灰化結節が形成されていることが、アリザリンレッド染色により確認された。すなわち新生骨が形成されていることが分かった。 ⑤では、マウス背中に粒子をインジェクトし、異所性骨形成を試みた。現状、この実験は進行中になるので、今後の課題として進めていく予定である 以上より、作製したカプセルは骨再生能力があることが分かり、骨粗鬆症の治療に向けた材料として期待することができる。
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