重篤な運動障害を伴う筋ジストロフィー症や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの患者の運動機能を補助・代替する機器として、脳活動信号に基づいて外部機器を制御するブレインマシンインタフェース(BMI)の技術に対する期待が高まっている。本研究では、非侵襲的な脳波計測を応用して多自由度ロボットの運動制御を可能にするために、皮膚感覚に関連する脳波成分が特定の身体部位への意識的注意によって変調を受ける性質に着目して意思を読み取る独自のBMI原理を提案している。これまでは、被験者を対象とした実験で予め計測・記録しておいた脳波データを、時系列でプログラムに読み込ませて意識的注意の有無を判別させるオフライン解析によって提案原理の有効性を実証し、サポートベクタマシン(SVM)を用いて判別するために有効な指標となる周波数成分の特定などを行ってきた。2022年度は、より実効的なBMIの構築を目指し、脳波計測―SVM法による解読―出力の一連の処理を逐次的に行うシステムの構築を目的とした。SVMを含む解読プログラムはPythonで構築し、脳波計で計測されたデータをリアルタイムで転送するためにLab Streaming Layer (LSL)を用いた。事前にSVMで学習させた判別器を用いて判別すると、約70%の正答率で意識的注意の有無を判別することに成功した。さらに、ロボットハンド、ロボットグローブ、PCアプリケーション、ドローンなどを提案原理で制御できる見通しが立ち、実用性のあるブレインマシンインタフェースの構築に近づくことができた。これら成果は、国内学会(2023年第70回応用物理学会春季学術講演会)にて発表しており、他の学会登壇や論文投稿も予定している。
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