研究課題
RNAレプリコン単体を用いた遺伝子治療は、生体内での治療用タンパク質の産出に関して有効性を示さなかったが、これは生体内のRNA分解酵素によりRNAレプリコンが分解されるためであると考えられている。本研究では、全身投与でRNAレプリコンを効率的に送達できる高分子ミセル型ナノキャリアを開発することで、難治性疾患に対する遺伝子治療を奏功させることを目指す。RNAレプリコンの送達効率を最大限に高める方法を確立するために、RNAレプリコンを高分子ミセルに内包してミセルのコア形成鎖である柔軟性ポリカチオン鎖との結合力を高め、RNA分解酵素の障壁を突破し機能させる方法を検証した。2019年度には高分子ミセルのビルディングブロックであるカチオン性ブロック共重合体の合成とRNAレプリコン内包高分子ミセルの調製を予定していた。ポリマーの合成については申請者の開発した従来法を改良することにより収率の高い新規合成法が開発された。また、RNAレプリコン内包高分子ミセルの調製についてはポリマーとRNAレプリコンの混合比を最適化することにより表面電位の中和されたナノ粒子の調製に成功した。さらに、2019年度に予定していた当初の計画以上に進展していることから、2020年度の前半に予定していた培養細胞を用いた評価に着手した。レポータータンパク質を翻訳するRNAレプリコンを高分子ミセルに内包し培養細胞に添加したところ、従来のmRNAよりも持続的かつ効率的な遺伝子発現効率が確認された。以上より、RNAレプリコン内包高分子ミセルに関する基盤技術が確立されたことから、2020年度に予定している培養細胞を用いた評価および実験動物を用いた評価についても当初の計画通りに進展することが期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
2019年度においては実験項目(A)カチオン性ブロック共重合体の化学合成、(B)RNAレプリコン内包高分子ミセルの調製、の実施を予定していたが、実験項目におけるマイルストーンが達成されたことから、実験項目(C)の培養細胞を用いた評価に取り組んでおり当初の計画以上に進展していると考えられる。
2019年度においては当初の計画以上の進捗が得られた一方で、2020年度前半においてはコロナウイルスへの対応が求められることから、研究計画を変更することなく当初の計画通り培養細胞を用いた評価と実験動物を用いた評価を進め、マイルストーンの達成を目指す。
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Advanced Healthcare Materials
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