研究実績の概要 |
アンフィダイナミック結晶とは、高い結晶性を持ちならが、その構造の一部で速い回転が見られる結晶である。通常の分子結晶では、結晶内での構造の大きな変化は期待できないが、アンフィダイナミック結晶では一部構造が回転によって大きく変化するため、通常の分子結晶では得られない特異な固体物性を発現することが期待できる。本研究では、このアンフィダイナミック結晶をベースに、外部電場や温度変化に対する外部刺激応答性を用いて結晶のキラリティーを制御するとともに、金(I)錯体の発光特性をハイブリッドすることで固体円偏光発光(CPL)が外部電場により制御可能な新規発光機能の開発を行なった。 当初の研究計画では、申請者が開発したダンベル型金錯体からなる発光性アンフィダイナミック結晶(Jin, M.; Chung, S. T.; Seki, T.; Ito, H.; Garcia-Garibay, M. A. J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 18115.)を基盤とした新しいCPL発光材料の開発を目標としており、本年度においては、そのプラットフォームになる化合物の合成とその物性調査を主に行った。 計画した発光性アンフィダイナミック結晶材料の合成に成功し、その結晶構造や固体中における分子の回転運動の変化様子も予想通りであることが明らかとなった。また、光物性を調査する段階で、温度変化を結晶に印加することでサンプルがジャンプするなど激しいマクロスケールの動きを示した。この様な現象はサリエント効果と呼ばれており、今回見出した発光性アンフィダイナミック結晶では、その回転部位の運動性変化に伴う結晶格子の歪みが鍵となりサリエント効果を発現したことが明らかとなった。
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