研究実績の概要 |
本研究課題は、神経細胞上に存在するシアル酸含有糖脂質(ガングリオシド)の一群であるc系列ガングリオシドを標的とし、その化学合成法の開発、さらに分子プローブを利用した機能解明を目的としている。初年度である本年度は、当初の研究計画に基づいて、c系列ガングリオシドの糖鎖部分の化学合成に注力し、以下の成果を得た。 1.二環性シアル酸ユニットの開発 c系列ガングリオシドの化学合成及びその分子プローブの開発はこれまで極めて困難とされてきた。その要因は、糖鎖に含まれるα(2,8)結合のシアル酸三量体の化学合成が極めて難しいことによる。本研究課題では、この課題の克服を目指し、新たなシアル酸三量体合成法を考案した。最近独自に開発したシアル酸の完全なα選択的グリコシド化法を基盤とし、α(2,8)結合合成用の新たな二環性シアル酸ユニットを二種類考案した。考案した候補の反応性の比較から、α(2,8)結合合成のための優れた二環性シアル酸ユニットを見出した。 2. シアル酸三量体の合成 上記の成果に基づいて、α(2,8)結合のシアル酸三量体の合成に取り組んだ。ガラクトースユニットを起点とし、二環性シアル酸ユニットを三度結合させる手法を試みた。その結果、三量体を高収率にて与える条件を見出し、新たな知見も得た。これにより、シアル酸三量体の合成に成功し、本研究課題で考案した合成法が有用であることを確認した。c系列ガングリオシドの合成達成に向け、さらに研究を進めている。
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