研究課題/領域番号 |
19K23631
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 智也 京都大学, 化学研究所, 助教 (90850371)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / ナノ粒子 / 発光材料 |
研究実績の概要 |
青色ペロブスカイトEL素子の実現において,1)いかに純度の高い青色発光を実現するか,2)いかにペロブスカイト薄膜の電荷注入および電荷輸送を向上するかが課題であった. 本研究では,まず,報告されている手法に基づいて,長いアルキル配位子(オレイン酸,オレイルアミン)を用いたホットインジェクション法により,緑色発光を示すCsPbBr3ナノ粒子の合成を行った.透過型電子顕微鏡観察により,10 nm程度の比較的サイズの揃ったナノ粒子が得られていることがわかった.次に,得られたナノ粒子に対して,短いアルキルアミンの臭化物塩を作用させることで,配位子を交換できることを見出した.配位子交換を行ったナノ粒子の分散液は,半値幅が80 meV程度と小さく,量子収率が80%を超える緑色発光を示した.また,配位子交換前後の透過型電子顕微鏡画像を比較すると,短い配位子への交換によって,ナノ粒子間の空隙が減少することがわかった.合成したナノ粒子を用いてペロブスカイトEL素子を作製したところ,短い配位子を用いることによって,電荷注入を向上し駆動電圧を低下できることがわかった. さらに,配位子交換にアルキルアミンの臭化物塩と塩化物塩の混合物を用いることにより,ハライド交換を同時に行い発光波長を短波長シフトできることを見出した.今後,臭素塩素混合系(CsPbBr3-xClx)を用いて,青色ペロブスカイトEL素子の作製検討を行なっていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,まず,報告されている手法(L. Protesescu et al. Nano Lett. 2015, 15, 3692.)に基づいて,長いアルキル配位子(オレイン酸,オレイルアミン)を用いたホットインジェクション法により,緑色発光を示すCsPbBr3ナノ粒子の合成を行った.透過型電子顕微鏡観察により,10 nm程度の比較的サイズの揃ったナノ粒子が得られていることがわかった.次に,得られたナノ粒子に対して,短いアルキルアミン(ブチルアミン等)の臭化物塩を作用させて,配位子交換を行った.1H NMR測定により,オレイン酸,オレイルアミンの配位子に由来するピークが焼失し,配位子が交換できていることを確認した.配位子交換を行ったナノ粒子の分散液は,半値幅が80 meV程度と小さく,量子収率が80%を超える緑色発光(ピーク波長:510 nm)を示した.また,配位子交換前後の透過型電子顕微鏡画像を比較すると,短い配位子への交換によって,ナノ粒子間の空隙が減少することがわかった.合成したナノ粒子を用いてペロブスカイトEL素子を作製したところ,短い配位子を用いることによって,電荷注入を向上し,駆動電圧を低下できることがわかった. さらに,配位子交換にアルキルアミンの臭化物塩と塩化物塩の混合物を用いることにより,ハライド交換を同時に行い発光波長を短波長シフトできることを見出した.
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今後の研究の推進方策 |
緑色発光材料CsPbBr3ナノ粒子について,長いオレイン酸,オレイルアミンの配位子を短いアルキル配位子に交換することで,電荷の注入を向上できることを見出した.また,アルキルアミンの塩化物塩を用いることで,ハライド交換により発光波長を短波長シフトできることが見えてきている.今後,色純度のさらなる向上およびスケールアップを実現するため,フローリアクターを用いたナノ粒子作製法の開発を行う.また,臭素塩素混合系(CsPbBr3-xClx)を用いた青色ペロブスカイトEL素子の作製検討を行なっていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今後,色純度のさらなる向上およびスケールアップのため,フローリアクターを導入し,これを用いたナノ粒子作製法の開発を行う予定である.
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