研究課題/領域番号 |
19K23645
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗山 翔吾 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (50850723)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ロジウム / 窒素固定 / シリルアミン / ピンサー配位子 |
研究実績の概要 |
近年遷移金属錯体を用いた温和な条件下で進行する触媒的窒素固定反応の開発が盛んに行われている。これまで様々な金属錯体を触媒として用いた報告例があるが、ロジウム錯体を用いた触媒反応は未だ達成されていない。一方で、我々はこれまでにピロール骨格を基盤とするアニオン性 PNP 型ピンサー配位子を有する鉄、コバルト、バナジウム錯体を用いた触媒的窒素固定反応の開発に成功している。今回、PNP 型ピンサー配位子を有するロジウム窒素錯体を設計・合成し、窒素分子からのシリルアミン生成反応に対する触媒活性について検討を行った。 3塩化ロジウムアセトニトリル錯体とPNP配位子のリチウム塩を反応させることで、PNP配位子を持つロジウム2価クロロ錯体を合成した。このロジウムクロロ錯体をカリウムグラファイトによって還元し、アニオン性ロジウム1価クロロ錯体とし、ナトリウムイオンとのカチオン交換を行うことでPNP配位子を持つロジウム1価窒素錯体を得た。合成した錯体は単結晶X線構造解析により詳細な構造を確認した 合成したロジウム窒素錯体1に対して、還元剤として600当量のカリウムグラファイト、シリル化剤として600当量のクロロトリメチルシランを常圧の窒素ガス雰囲気下THF中室温で20時間反応させた。その結果、触媒あたり6.9当量のシリルアミンの生成を確認した。また反応温度を-40℃に低下させることでシリルアミンの生成量は大幅に増大し、触媒あたり23.2当量のシリルアミンが生成した。本反応はロジウム錯体を触媒とした窒素固定反応の世界初の例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度においては、これまで達成例のないロジウム錯体を用いた窒素固定反応の開発に取り組んだ。その結果、新規にピンサー配位子を持つロジウム窒素錯体の合成に成功し、この錯体を用いることで世界初のロジウム錯体を触媒とした窒素分子からのシリルアミン生成反応の開発に成功した。この研究成果は学会発表を行うとともに、Chemical Communications誌に掲載された。また、7族金属や鉄・コバルト錯体を用いた窒素固定反応の開発につながる予備的な知見も得られており、その成果については学会発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、触媒的窒素固定反応が達成されていない金属種、特に7族錯体を用いた触媒的アンモニア及びシリルアミン生成反応の開発に引き続き取り組んでいく。また、窒素固定反応に対してより高活性な触媒開発を目指し、新規触媒開発にも取り組む。こちらにおいては、新規ピンサー配位子の合成に成功しており、対応する鉄・コバルト錯体も得られている。よってこれら鉄・コバルト錯体から触媒となる窒素錯体の合成を行い、触媒活性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度においては、当初の予定よりも研究がスムーズに進行したことに加え、学会等にともなう出張もなかったため支出が少なかった。さらに次年度において当初の予定よりも多い装置・物品の購入を計画している。特に研究の遂行に必要なガラス器具や試薬類を多く購入する予定である。
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