本年度は、昨年度に開発したフレキシブル基板を用いたマイクロ波電磁波分光法を用いてさらに多くの材料系を評価し、その適用範囲を広げるとともに、成膜方法としてウェットプロセスを採用することにより結晶を大きく成長させ、一軸圧縮を示すことに成功した。このような結晶が大きく成長した系においてin-situ X線回折測定では、デバイリングではなく明確な回折スポットを与えたことから、結晶がコリメートX線照射サイズよりも十分大きく成長していると考えられる。これは偏光顕微鏡において、ある角度において暗視野を与えることとも整合している。このような素子について一軸方向の圧力を印加したところ、圧力印加軸方向に対して優先的に圧縮がかかり、幾何学的に計算される圧縮率と整合性ある結果を与えた。 有機リンカーが結合した巨大分子であるCovalent organic framework(COF)は、2次元方向に共有結合、1次元方向にパイスタックを形成することが多いため、その電気伝導度に大きな異方性が期待される。本年度は光電気伝導度を示すCOFの設計に成功し、この材料の光電気伝導度の異方性をマイクロ波電磁波分光法を用いて測定したところ、共役系の発達した面内方向に優位に大きな信号を与えた。この材料に~100MPaの圧力を印加したところ、光電気伝導度に向上は認められなかったが、圧力が十分ではなく面間の距離を変調するには至っていないと考えられる。今後はさらなる圧力の印加とともに、in-situ X線回折測定により、面間の距離の圧力依存性を実験的に決定する必要がある。
|