本課題では、従来の欠点を克服した「緑の革命」植物の創生を見据え、DELLAが多様なクラスの転写因子を認識する機構に着目し、その複合体構造基盤解析を推し進めることでDELLAが多様な生命現象を制御できる原理的な知見を得ることを目的としている。 昨年度に引き続き、DELLA-転写因子複合体の結晶化を試みたが、DELLAの収量が低さが結晶化スクリーニングのボトルネックとなっていた。そこで本年度は、DELLAのコンストラクトおよび精製法を改善することで、収量を大きく増加させることに成功した。また、この試みの中で、シロイヌナズナ由来DELLAには二量体型と単量体型が非平衡状態で存在することを見出した。さらに、二量体型のDELLAのみが標的転写因子であるBZR1と相互作用することが明らかになった。これらの結果は、DELLAの分子内に二量体形成能を変化させる未知の制御スイッチング機構が備わることを強く示唆している。 また、DELLAが標的とする転写因子の遺伝子制御機構により深く迫るため、植物ホルモン・ブラシノステロイドの鍵転写因子であるBZR1の生化学的解析・構造生物学的解析にも取り組んだ。これまでBZR1は6塩基のDNAをコア配列として認識すると考えられてきたが、生化学的解析により周辺2塩基ずつを含んだ計10塩基を特異的に認識することが明らかとなった。Plant Cistrome Databaseから抽出したIn vitroゲノムワイド解析、および共同研究チーム独自のマイクロアレイの結果と照らし合わせてみたところ、この周辺配列2塩基の認識がBZR1を介した転写抑制制御に大きく寄与することが示唆された。さらに、X線結晶構造解析により、BZR1はDNAの歪みやすさを認識することで、周辺2塩基への特異性を生み出すことが明らかになった。 本研究で得られた結果は、植物の成長肥大制御を詳細に理解する上で極めて重要な知見であり、植物の生長を自在に制御できる基盤技術の創出につながる可能性がある。
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