研究課題/領域番号 |
19K23663
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
上田 大次郎 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60843919)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | terpenoid / ambrein / natural products |
研究実績の概要 |
生物が生産する有機化合物(天然物)は、構造が複雑であり、人工的に合成することが困難な化合物が多い。これらは医農薬・香料・機能性食品素材などとして人間生活に広く利用されてきたが、その多くが化学合成によって産業化されてきた。一方、最近、天然物の生合成遺伝子・酵素の機能解析が飛躍的に進み、生合成を利用した効率的な物質生産に対し、クリーンかつ経済的な新しい技術基盤として大きな期待が寄せられてきている。しかしながら、すべての天然物生合成経路は明らかになっていないのが現状である。応募者は「生合成経路が明らかでない化合物でも既知の酵素をうまく進化させることで自在に酵素合成できる」と考えている。本研究では、応募者が研究対象としてきた希少非対称化合物(アンブレイン)をターゲットとし、「酵素の戦略的進化により、非対称化合物の厳密な酵素合成」を成し遂げることで、「既知酵素を用いた自在な化合物の創出」への足掛かりを提示する。 本研究では、変異型BmeTCをモチーフとし、カロテノイド生合成にみられる機構とは異なる非対称性の創出戦略におけるニューロジックの検証を目的とする。以前の研究では、1つの酵素で対称(スクアレン)から非対称(アンブレイン)を合成することはできたが、対称な副生成物が沢山生産された。本研究は進化工学を取り入れることによってはじめて厳密な非対称生合成(単環形成と二環形成)を可能にする。また、非対称な2骨格を形成する酵素は、自然界では前例がないと考えられ、酵素を扱う生命科学全般において特筆すべき成果となる。本研究は可視化によるスクリーニングを特徴としているため、すべてのスクアレンを素早く消費するような進化=酵素の安定性を高める進化をした進化型BmeTCのライブラリーを容易に作製することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、進化型BmeTCのスクリーニングのため、「進化型BmeTC(酵素の安定性を高めるよう進化させたBmeTC)ライブラリーの作製」を行っている。 ライブラリー作成に着手したところ、大腸菌に対して致死性を示すようになり、様々な条件検討(菌株の選択や生育温度条件)を行った。結果、大腸菌に対する致死性に関しての問題は解決した。 しかし、実際に抽出実験を行ったところambreinの生成が確認されず、さらなる条件検討が必要であることが判明した。そこで、ベクターの検討や、培養条件などの条件検討を行い、ambrein生成の問題を解決することができたためおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
既にSHCと同様の系でスクリーニングが可能であったため、今後、この系を用いて酵素の安定性に優れた株の菌体抽出物と、スクアレン基質として酵素反応を行っていく。酵素反応生成物をHPLC-MS解析することで非対称生合成酵素のスクリーニングを行う。さらに基質が酵素に結合したX線結晶構造解析を行い、どのように基質を認識しているのかを明らかにし、「非対称生合成機構」を解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大腸菌の致死性の実験をメインで行っていたため、遺伝子試薬を大量に使用しなかったため、また、論文の校正費用がかからなかったため。 次年度は大量の遺伝子試薬と論文校正費用に充てる。
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