2020年度は、PQQ-GDHから電極の間の電子移動経路を推測し、電子移動の円滑化が期待される部位への新規PES修飾のための変異を導入することで、PESを修飾した際のPQQ-電極間の電子伝達効率を向上させたPQQ-GDH変異体の作製に成功した。 2021年度はさらにPQQ-電極間の電子伝達効率が向上した変異体の作製とPQQ-GDH変異体および超好熱性アーキアPyrobaculum aerophilum由来マルチ銅オキシダーゼ(McoP)を電極触媒としたバイオ電池の作製を試みた。PQQ-GDHの分子表面に存在するリシン残基の中で、PESを修飾した際に、PQQから酵素分子表面のPESを介して移動した電子を最終的に電極へ伝達するPES修飾アミノ酸残基はK319と推測されていたため、固定化した際にK319-電極間の距離と近く、酵素への影響が少ない316番目のグルタミン酸残基をリシン残基へ置換した変異体(E316K)を作製した。E316Kの発現および活性は確認されたものの、これまで用いてきたHis-tagを介した電極表面へ酵素固定化を用いることができなかった。変異の導入によって、His-tagが酵素分子表面から離れなくなるような相互作用が生じてしまったと考えられ、異なる変異体を作製する必要がある。また、PQQ-GDH変異体S273Kをアノード触媒として用いてバイオ電池を作製し、グルコースを基質として評価したところ、PQQ-GDH変異体S273Kをアノード触媒として用いたバイオ電池は野生型PQQ-GDHを用いたバイオ電池と比較して1.5倍の最大出力を示し、作製したPQQ-GDH変異体S273Kがバイオ電池用触媒として有用であることが示された。
|