研究課題/領域番号 |
19K23669
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
後藤 早希 東京農業大学, 生命科学部, 研究員 (70845651)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 3HBオリゴマー / 3-ヒドロキシブタン酸 / ポリエステル合成微生物 / Bacillus / 分泌生産 |
研究実績の概要 |
本研究は、Bacillus megateriumにおける3-ヒドロキシブタン酸(3HB)オリゴマー生産の合成・分泌機構を明らかにすることを目的としている。B. megateriumにおいてポリ-3-ヒドロキシブタン酸[P(3HB)]の重合酵素と分解酵素が存在するため、重合酵素により菌体内に合成されたP(3HB)が分解酵素によりオリゴマーに分解され、菌対外に分泌されていることを予測した。そのため、令和元年度では、3HBオリゴマー生産の経時的変化の分析を行った。 B. megaterium NBRC 15308を96時間培養し、細胞内に蓄積したP(3HB)量と、細胞外に分泌した3HBオリゴマー量の経時的変化をガスクロマトグラフィーおよび酵素法を用いて分析した。その結果、培養24時間目では、約0.5 g/LのP(3HB)の蓄積と微量の3HBオリゴマーの分泌が確認されたが、培養48時間目では、P(3HB)量は減少し(約0.2 g/L)、3HBオリゴマー分泌量は増加した(約0.2 g/L)。また、蓄積したP(3HB)の分子量をゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定した結果、培養48時間目以降に平均分子量は減少していた。さらに、細胞内・外の3HBオリゴマーの重合度をESI-TOF-MS分析して比較した。細胞内では、培養48、72、96時間目において、8-20量体のオリゴマーが確認された。細胞外では、培養48、72時間目に3-17量体、培養96時間目に3-20量体のオリゴマーが確認され、培養後半では、より重合度の高いオリゴマーが分泌されていた。また、B. megateriumで分泌されるオリゴマーは、既存の報告にある組換え大腸菌のそれ(3-8量体)よりも2倍以上長いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画通り、B. megateriumにおけるオリゴマー生産の経時的変化の分析を行った。その結果、培養前半に蓄積したP(3HB)が、培養後半に減少し、細胞外にオリゴマーが分泌されていることが分かり、次年度の研究につながる知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム情報により、B. megaterium NBRC 15308は複数の分解酵素を有していることが分かっている。それぞれの破壊株を作製し、それに伴ったP(3HB)蓄積量や、オリゴマーの分泌量・重合度の変化を確認し、詳細なオリゴマー生産機構を明らかにする。また、本年度の研究により、B. megateriumの培養液上清において3-20量体のオリゴマーが確認された。10量体以上のオリゴマーは疎水性が高く、一般に分泌が難しいことが想定される。そのため、B. megateriumでは親水性の物質(タンパク質など)と共にオリゴマーが細胞外へと分泌されている可能性が考えられる。今度、B. megateriumのタンパク質の分泌や膜構造に着目し、分泌機構の解明を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、予定していた学会に参加できなかったため、次年度使用額が生じた。さらに、次年度は実験を迅速に進めるため、機器類を購入し、消耗品額にあたる試薬の使用量も増加する予定である。
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