研究実績の概要 |
天然資源からの新規化合物の探索は、新たな医薬リード化合物を発見するうえで非常に重要である。しかしながら、従来の、研究室においてよく使われる生理活性を指標とした探索法では、既知化合物にあたる確率が高く、新たな探索法や未開拓な天然資源が求められている。本研究では、天然物化学の分野においてこれまで比較的活用されて来なかった微生物、特に好塩菌を対象とし、NCBIのデータベースで公開されているゲノム情報を解析した。既知化合物の生合成遺伝子との相同性が低い遺伝子を持つ入手可能な細菌について、生産されうる化合物の構造を解析し、新規性の高いものについて、細菌を各種条件で培養し、代謝物の解析を行った。また、沖縄県の沿岸に生息する水生生物から単離された海洋細菌のうち、ゲノム中の二次代謝産物生合成遺伝子が豊富といわれるPseudoalteromonas属について代謝物の解析を行った結果、海藻から単離されたPseudoalteromonas piscicidaの培養液抽出物中から、新規化合物pseudoalteropeptide Aを単離、構造決定した。Pseudoalteropeptide Aは、天然物としては初めて6-amino-3,5-dihydroxy-7-(1'H-imidazol-5'-yl)heptanoic acid構造を有し、2個のN5-acetyl-N5-hydroxyornithineと脂肪鎖末端を持つlipopeptideであることが分かった。Pseudoalteropeptide Aは、iron chelating活性を持ち、また、Jurkat human T lymphocyte細胞に対して細胞毒性を示すことが分かった。
|