果実における内部組織発達メカニズムの解明

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K23672
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 篠崎 良仁 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (60841971)
• 研究期間 (年度): 2019-08-30 – 2021-03-31
• キーワード: 果実発達 / トマト / ゲノム編集 / CRISPRスクリーニング

研究実績の概要

果実は様々な組織で構成された植物の生殖器官である．主要な内部組織の一つである胎座の発達は，種子形成，果実肥大，食味関連成分や有用機能性成分の蓄積など，種子および果実生産における重要形質と密接に関連している．しかし，胎座組織の発達を制御する生理分子機構の詳細は明らかとなっていない．本研究では，種子および果実の生産性や付加価値を向上させる技術の開発につながる基礎的な知見を得るため，果実内部組織の発達障害が生じるジベレリン変異体を用いたイメージング質量分析やゲノム編集技術を用いたCRISPRスクリーニングを実施し，トマト果実をモデルとした胎座組織の発達に関与する新規分子の同定を試みた．
本年度は，前年度にトマト果実内部組織に特異的な遺伝子群を標的としてマルチガイドCRISPR/Cas9システムにより作出した，変異導入系統群の果実形質のスクリーニング評価を行なった．その結果，果実の内部組織の発達および肥大成長が強く抑制され，野生型で横長であった果実形態が縦長に変化した編集系統が得られた．同定された変異遺伝子は，果実肥大期の胎座組織で強い特異的発現を示すTALEファミリー転写因子をコードするものであった．興味深いことに，標的領域の配列編集パターンによって異なる果実形質が観察された．さらに，果実組織別トランスクリプトームデータの再解析を行なったところ，同遺伝子は推定上のパラログやタンパク質間相互作用パートナーとともに時空間的に強固な共発現ネットワークを形成しており，トマト果実内部組織の発達制御を担う可能性のある分子群が明らかとなった．

研究成果

• [国際共同研究] University of Bordeaux/INRAE(フランス)
  • 国名: フランス
  • 外国機関名: University of Bordeaux/INRAE
• [雑誌論文] Fruit setting rewires central metabolism via gibberellin cascades. (2020)
  • 著者名/発表者名: Shinozaki Y., Beauvoit B.P., Takahara M., Hao S., Ezura K., Andrieu M.-H., Nishida K., Mori K., Suzuki Y., Kuhara S., Enomoto H., Kusano M., Fukushima A., Mori T., Kojima M., Kobayashi M., Sakakibara H., Saito K., Ohtani Y., Benard C., Prodhomme D., Gibon Y., Ezura H., Ariizumi T.
  • 雑誌名: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 巻: 117 ページ: 23970-23981
  • DOI: 10.1073/pnas.2011859117
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] マルチオミクス解析を利用したトマト着果における糖代謝制御を担う遺伝子の同定 (2020)
  • 著者名/発表者名: 篠崎良仁，江面健太郎，西田敬二，森一樹，久原哲，鈴木穣，榎元廣文，草野都，福島敦史，森哲哉，江面浩，有泉亨
  • 学会等名: 日本育種学会