研究実績の概要 |
食用ダイズの黄色い種皮では自然発生RNA干渉によりアントシアニン合成が抑制されている。しかしこのRNA干渉は種皮のみでおこり、胚乳や葉ではアントシアニンやイソフラボンが合成されており、この器官特異性を決定づける因子は明らかになっていない。 申請者はこれまでシロイヌナズナやアブラナを用いてRNA干渉において最重要酵素であるダイサータンパク質DCL3, DCL4が器官特異的に制御されていることを明らかにしてきた。この知見を基にダイズの器官特異的RNA干渉はDCL3, DCL4が種皮特異的に制御されているという仮説を立てた。本研究では①植物共通のDCL3, DCL4活性化物質の解析と②ダイズ特有のDCL3, DCL4阻害物質の同定を行うことによって、ダイズの重要形質を決定する器官特異的RNA干渉の発生メカニズムを明らかにするものである。 2019年度は黄ダイズ・エンレイを用いて活性化物質の定量及び阻害物質の探索を行なった。DCL3, DCL4が阻害されている葉では葉の成熟段階に応じて蓄積に変化が見られることが明らかになった。またDCL3, DCL4の阻害は2つの物質が影響しあうことによって阻害が行われていることが示唆された。 さらにエンレイだけでなく複数のダイズ品種を用いてDCL3, DCL4の活性を測定したところ、品種によって活性に違いが見られた。この違いは種皮におけるRNA干渉の程度に相関していることから、DCL3, DCL4の活性によるRNA干渉の器官特異性は一部の品種に限らずダイズ全体で保存されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通りに活性化物質の定量を行うことができた。これまでの研究からDCL3, DCL4の阻害は1つの化合物によって行われていると考えていた。しかし本年度の研究から2つの異なる性質をもつ物質が相互作用しあうことによってDCL3, DCL4の阻害が起こることが明らかになった。この2つの物質の性質を明らかにすることができた。また精製化合物を用いたDCL3, DCL4阻害実験を行い、DCL4を強く阻害する化合物を見つけることができた。 さらに当初の計画では黄ダイズであるエンレイの1品種のみの解析を予定していたが、複数のダイズ品種を用いる実験に発展させることで、DCL3, DCL4の活性と器官特異的RNA干渉の関係性が特定のダイズ品種(エンレイ)のみで起こる現象なのか否かを検証することができた。
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