研究実績の概要 |
RNA干渉は小分子RNAを介した遺伝子発現制御機構で、多くの真核生物で保存されている。植物でも特有かつ農業上重要な形質をもたらしている。重要作物の1つであるダイズはアントシアニンが蓄積しない黄色い種皮をもつ品種が世界中で栽培されているが、この形質はRNA干渉によってカルコン合成酵素CHSが抑制されているからである。しかしこのRNA干渉は植物全身で起きているのではなく、葉など他の組織では起こらずアントシアニンが黒い品種のダイズ同様に蓄積するが、この期間特異性決定メカニズムは明らかになっていない。本研究では葉でも小分子RNA前駆体が転写される一方小分子RNAの加工がおこなわれないことから、小分子RNAの生成を担う大サータンパク質(DCL3, DCL4)に着目し、この現象の解明をおこなった。 本研究では①DCLタンパク質の酵素活性は器官特異的RNA干渉が起きているエンレイの種皮では検出されるが、起きていない葉ではDCL3,DCL4両方が活性が検出されないこと②葉ではDCL3, DCL4両方を阻害するタンパク質とDCL4を特異的に阻害する熱安定性の低分子化合物が存在すること③RNA干渉によって合成が抑制される低分子化合物フラボノイドがDCL4を生化学的に阻害することが明らかになった。 これは古くから知られるフラボノイドへのRNA干渉の新しい生化学的な知見を提供するだけでなく、植物におけるあらたなフラボノイド・RNA干渉の制御機構を示唆するものである。 本研究成果は2021年度に学会で発表をおこない、現在論文投稿中である。
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