研究課題/領域番号 |
19K23677
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西 大海 九州大学, 農学研究院, 助教 (30747879)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 昆虫寄生菌 / 土壌害虫 / アザミウマ / 生物的防除 / 高温 / 日照 / 病原力 / 定着力 |
研究実績の概要 |
供試菌株の準備について、アザミウマ用の昆虫寄生菌製剤として使用されている菌株よりも防除効果の高い可能性のある菌株を分離するため、アザミウマの蛹化場所である地下0-2cm部分の自然土壌に生息する昆虫寄生菌の探索を行なった。九州大学敷地内の林床と草地で地下0-2cmと8-10cmの土壌を調査した結果、一般に広宿主域の昆虫寄生菌と考えられているMetarhizium pingshaenseのPCR-RFLP型のRS13型とRS15型が高頻度で検出され、13型は深度0-2 cmにおける生菌密度が8-10 cmのよりも高く、15型はそれとは逆の傾向があることが示唆された。RS13型はRS15型よりも土壌の地下0-2cm部位での定着が良い可能性があるので、これら2型がアザミウマ蛹に対する病原性を有することが確認できた場合には、これらも供試株に加える予定である。 病原性評価について、まずミカンキイロアザミウマの蛹に対する病原力を調査した。M. pingshaense SMZ2000株については半数致死量LD50値はおよそ50分生子/個体であることを明らかにした。また、土壌中の生菌密度と羽化率の関係性の解明のため、菌体を混合した土壌に2齢幼虫を自ら潜らせ、その後の羽化数を記録する試験を進行中である。さらに、昆虫寄生菌の土壌混合による、アザミウマの数世代に対する防除効果を評価するポット試験も進行中である。現在、SMZ2000株を供試し、ピーマンとシシトウのポット栽培の土壌に混合した菌密度とアザミウマ個体数との関係を調査中である。 高温耐性と日照耐性の評価について、生息環境と生育適温が異なることを既に明らかにしているM. pingshaenseとM. brunneumをまず供試したが、これまで行なった評価方法では、種やPCR-RFLP型ごとの傾向は認められず、菌株レベルでの変異が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然土壌のアザミウマの蛹化場所である地下0-2cm部分における昆虫寄生菌の生菌密度の評価により、分類群ごとの傾向が見出され、その土壌環境に定着のよい可能性のある菌株を選抜できたため。また、供試菌株の分生子の直接接種によるアザミウマ蛹に対する病原性、分生子の土壌混合による羽化率への影響およびポット試験での個体数の経時変化への影響、高温耐性、および日射耐性の定量評価系が概ね確立されたため。
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今後の研究の推進方策 |
分生子の直接接種による病原力、分生子の土壌混合による羽化率への影響、分生子の土壌混合による室内ポット試験での個体数への影響、高温耐性、日照耐性については、昨年度確立した方法でSMZ2000以外の菌株も含めて評価する。今年度は新たに土壌性菌作用、灌水による沈降性、温室でのポット試験も新たに開始する。 灌水による沈降性の試験は、自然土壌からの昆虫寄生菌の分離・定量方法の応用により、すぐに確立可能であると考えている。各供試菌株の沈降性の評価に加え、その原因として予想される土壌表面での分生子の発芽速度および分生子の表面の性質(親水性、疎水性)との関連性も検証する。 土壌静菌作用については、寒天培地上での評価法は昨年度以前に確立していたので、供試株について、評価を行う。アザミウマ蛹上での評価法は病原力および羽化率試験の方法が応用可能であり、これらの試験方法において、アザミウマ蛹表面上の分生子の発芽と禁止身長をGFPまたは抗体標識で経時的に観察することによって、土壌静菌作用の各供試株の感染への影響の程度を明らかにする。 自動加温・換気機能の温室でのポット試験を行う。室内試験で確立した方法をもとに、底面給水機能のポットに、菌体を混合した土壌を入れ、シシトウまたはピーマンの苗を移植し、ポットごとに不織布で覆い、アザミウマを放飼後、個体数と土壌中の生菌数を9週間に渡り3週間おきに調査する方法で行う予定である。 以上の結果から得られた各菌株の特性と防除効果の評価値の重回帰分析により、各特性の防除効果への寄与度を算出し、病原性と土壌環境に関わる菌株特性の中で、どの特性が特に防除効果に強く寄与するか推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行により年度末の学会大会の開催が中止になり旅費の分に余剰分が生じた。この分は次年度での学会発表や論文投稿など成果発表のために使用する予定である。
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