昆虫寄生菌に関して、土壌混合によるミカンキイロアザミウマに対する防除効果とそれに関連しうる菌株特性の評価を行なった。Metarhizium pingshaense SMZ2000株、Beauveria bassiana GHA株、および他数株を用いた。 土壌生息期である第1蛹と第2蛹に対する病原力について、脱皮後6時間以内の第1蛹と第2蛹に分生子懸濁液を接種し生存率を評価した結果、病原力は第1蛹では差異がなかったが、第2蛹ではSMZ2000株が最も強かった。第1蛹と第2蛹では、第1蛹の方が抵抗性が高かったが、これは第1蛹の方が接種してから次の脱皮までの期間が短いために脱皮により分生子が除去されやすかったためと考えられる。分生子を混合した土壌に2齢幼虫を自ら潜らせて7日目の羽化率と生存率を比較した結果、羽化率と生存率ともにSMZ2000株の効果が強かった。また、これらの試験において、接種区の羽化成虫には翅の形態異常、生存期間と産子数の減少が認められ、羽化後の影響も防除効果に寄与すると考えられた。 園芸培土の表層(地下0-2 cm部位)での土壌定着性に関して、SMZ2000株とGHA株ではSMZ2000株の方が園芸培土での定着が高かった。冬季加温時のガラス温室ではSMZ2000株は表層土において生菌数密度の増加が認められた。園芸培土中での発芽率は土壌導入後1週間以内では両株とも非常に低いが、GHA株の方がわずかに高い発芽率を示した。フィルターを挟んで園芸培土と接している寒天培地で培養した場合には、両株とも発芽と菌糸成長が抑制され、土壌静菌作用に感受性であることが確認された。 高温および太陽光(紫外線)耐性に関しては、SMZ2000とGHA株は同等であった。両株とも分生子が発芽すると同程度に耐性が弱くなることも明らかとなった。
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