新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて実施が遅れていた現地調査について、2021年7月(九州自動車道: 1972年開通区間)、8月、10月(中央自動車道: 1972~1975年開通区間)に、毎木調査、植生調査及び土壌貫入試験を実施した。なお土壌貫入試験について、タケ類優占群落では地下茎の形態上実施困難と判断したため、木本主体群落の成立が確認された法面でのみ実施した。また過去に実施された植生調査結果と合わせて対象法面における植生と土壌の変遷を明らかにするほか、既往研究(Oyake et al. 2019)で明らかにした名神高速道路における植生の変遷とあわせて、特に主要構成種、垂直構造、土壌物理性の変遷について情報の蓄積及び考察を行った。 九州自動車道法面5地点11プロット(うち1地点2プロットは現地の状況から植栽法面であると判断されたため解析・考察から除外した)のうち4地点すべてにおいてタケ類優占群落の成立が確認できた。九州地方は他地方に比べて竹林地点数が多いことがGIS数値情報に基づく日本全国の竹林分布調査(染谷ほか 2010)でも示されており、九州地方ではタケ類優占群落への移行ポテンシャルが高いことが示唆された。 中央自動車道4地点12プロットにおいては落葉広葉樹優占の法面が多くみられ、既往研究で示した遷移系列と同等の傾向を示した。一方で、1地点において名神高速道路では確認されなかったアカマツ成木が確認された。中央自動車道法面3地点における土壌貫入試験の結果、植物根の侵入可能な硬度の土壌(長谷川ほか 2006)が出現する最深地点の深さを比較したところ、アカマツ成木生育法面の土壌発達が他地点より浅い地点でとどまっている傾向が示された。 以上より、①法面植生の変遷の方向性や速度の地域差の存在、②法面における土壌発達と植生遷移の進行度との関連性が示唆された。
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