研究課題/領域番号 |
19K23689
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
平原 南萌 創価大学, 理工学部, 研究員 (80845404)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 内湾性カイアシ類 / 脂質 / タンパク質 / 生合成 / 飢餓耐性 |
研究実績の概要 |
本研究では、長期間かけて脂質を体内に蓄積する外洋性カイアシ類とは異なり、短期間のうちに激しく変動する餌料環境に適応するための、内湾性カイアシ類特有のエネルギー蓄積メカニズムを解明し、カイアシ類の新たな生理学的生存戦略を提案することを目的とする。エネルギー蓄積能を有する内湾性カイアシ類を現場調査により探索し、環境要因とエネルギー蓄積の関係を考察する(研究課題1)。また、内湾性カイアシ類が体内にどのような物質をためているかについては、乾燥重量やCHN質量分析にくわえ、SEM-EDS (元素分析)・GCMS (脂肪酸・アミノ酸組成)・LCMS (色素組成)・NMR (結合水の半定量分析)などを用いて解明する (研究課題2)。さらに、室内実験にて、エネルギー物質の蓄積速度を測定する(研究課題3)。 当該年度は、相模湾真鶴港においてプランクトン試料を採集し、Acatia属カイアシ類を対象にエネルギー蓄積能を有するカイアシ類種を探索した。既往研究より、Acartia属カイアシ類 (体長: 638から1109 μm ind.-1)の1個体あたりの乾燥重量は4.3から10.0 μg ind.-1の値を推移するのに対し、本調査海域に優占するAcartia steueriの乾燥重量の年平均は56.2±58.8 μg ind.-1という値を示し、時期によっては他種を大きく上回る重量を示すことが明らかとなった。それ以外に本調査海域で採取されたAcartia japonicaなどは他種と同等の乾燥重量であった。以上の結果から、本研究では、エネルギー蓄積能を有する内湾性カイアシ類をAcartia steueriと決定付け、次の培養実験の対象種とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他のAcartia属カイアシ類よりも有意に高い乾燥重量を示すカイアシ類種を探索し、本調査海域におけるエネルギー蓄積能を有する内湾性カイアシ類種を決定づけ、環境要因との関連性を考察した。しかしながら、対象種Acartia steueriの出現時期とコロナウイルスによる実験室の立入および調査の禁止が重なり、エネルギー物質の蓄積速度を調査するための培養実験および分析がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
屋外調査が許可される7月以降、相模湾真鶴港に赴き、対象種Acartia steueriを採集し、高濃度餌料条件と飢餓条件を設けた培養実験を実施する。乾燥重量やCHN質量分析の他に、SEM-EDS (元素分析)・GCMS (脂肪酸・アミノ酸組成)・LCMS (色素組成)・NMR (結合水の半定量分析)を用いてA. steueri成体を分析し、本種のエネルギー蓄積特性およびエネルギー物質の蓄積速度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月末に参加予定であった国内・国際学会が、コロナウイルスの影響により開催中止となり、旅費の支出が0となったため。対象となるカイアシ類の出現時期が3月以降で、コロナウイルスによる活動禁止期間と重なり現場調査に赴くことができなかったため。
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