研究課題/領域番号 |
19K23699
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
向井 章恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (90414458)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 点滴かんがい / 果樹栽培 / 水田用水利用 / 目詰まり対策 |
研究実績の概要 |
高品質な果樹栽培のための点滴かんがいには大量の水が必要であるが,その確保にかかるコストは非常に高い。水量の確保とコスト削減を目的として,水田を果樹園に転用することとし,水田用水に含まれる藻類等が引き起こす点滴かんがい施設の目詰まりのプロセスを分析した。 点滴かんがい施設はパイプライン系の水田圃場(約10a)に設置し,給水栓から短辺方向にサンドフィルタとディスクフィルタを塩化ビニル管で接続し,塩化ビニル管から8本のポリエチレン管を等間隔で長辺方向に50m敷設した。各ポリエチレン管には電磁弁とドリッパー(40個)を取り付けた。また,かん水開始にあたって,送水の過程で生じる摩擦損失水頭とサンドフィルタ,ディスクフィルタ,電磁弁,ドリッパーの局所損失水頭の合計を計算したところ約11mとなったが,給水栓からの水圧はこれより小さかったため,かん水は4本のポリエチレン管ごとに2回に分けて行った。また,かん水中のクロロフィル濃度を計測するため,ディスクフィルタの直上流部の塩化ビニル管を切断して管内にクロロフィルセンサを固定し,切断部を鋳鉄製の継手(取り外し可能)でカバーした。 ディスクフィルタの目詰まりは,かん水開始から30日後に発生した。下流への送水が停止し,管の内圧が上昇したことで継手が外れて漏水が生じた。この時のクロロフィル濃度は45ppbであった。クロロフィル濃度と同時計測した濁度についても,クロロフィル濃度とほぼ同じ変化が見られ,目詰まり時はかん水開始時の約40倍の値となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染対策に伴う移動制限により,データ収集を円滑に行うことができないと判断し,県外に設置していた点滴かんがい施設を市内に移設した。移設作業に時間がかかり,データ収集を開始したのが収穫期に相当する10月となった。満開~落葉期のデータ収集を行うため,補助事業期間を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
水田用水の利用による点滴かんがい施設における目詰まりについて,かん水中のクロロフィル量を計測するなどして,そのプロセスの分析を継続して行う.加えて,ディスクフィルタの清掃のタイミングについて,現在主に利用されている圧力ゲージの値とクロロフィル量の相関を取るなどして,農家に科学的根拠を明確にして通知する仕組みを作る。得られた結果は学会等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初今年度に行う予定だった満開~落葉期のデータ収集を次年度に行うことになったため,その経費が次年度使用額となった。
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