研究課題/領域番号 |
19K23700
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
皆川 裕樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (70527019)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 洪水・渇水一体解析 / 低平地排水 / 流域水循環 / 流域水管理手法 |
研究実績の概要 |
モデル構築の対象地区に、低平農地域である新潟県西蒲原地区を選定した。 まず同地区において10mDEM標高、土地利用等のGISデータ情報を入手し、1km×1kmの計算用メッシュを整理した。モデル上の河道網の発生と河道長の算定には山崎ら(2009)のFLOW手法を適用した。ここで、低平地の排水に大きな役割を果たす農業用の幹線排水路の情報を日本水土図鑑より抽出し、河川情報として取り込むことで、自然の流れに加えて人工施設による排水経路を考慮した。河道流れの計算には不定流モデルを組み込んだ。これにより、低平地特有の流れ現象であるバックウォーターの影響を考慮でき、さらに地域への気象災害リスク配信にとって重要となる水位情報の出力が可能となった。また、各河道への地域からの流入量は、同地区で既に構築していた既存水循環モデルによる計算結果を横流入として与えることとした。 これらの処理によって解析の準備を整え、2011年7月末に発生した新潟・福島豪雨を対象に解析を実施し、既存モデルの流量結果と比較した。その結果、当初の段階では最下流の河川で流量が発生せず、問題があることが分かった。原因を精査すると、標高精度が原因で河道が上下流で負の勾配となる部分が多数あり、下流に水が流れないことが影響していると推察された。この点を解消するため、より詳細な標高データである5mDEMを活用し、河道の出発点と到達点となる代表ピクセル地点の標高を再取得して与えた。同時に、流量を水位に変換するために重要となる河道幅情報も5mDEMから判断することとした。具体的には、河川ライン上に一定間隔で直交線を作成し、直交線上の標高断面から水域幅を算定し、当該メッシュの河道幅とした。これらにより、計算結果は当初から大幅に改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、低平地対応型の水循環モデルのプロトタイプを対象地区に適応し、解析実施可能にする段階まで進捗した。初年度の研究計画である必要データセットの作成は既に完了し、洪水の計算アルゴリズムの構築を進め具体的に計算を実施する段階まで進めることができたため順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に、洪水時の河道計算の実施方針は概ね固まったが、低平地に多く造成されている排水機場や水門などの水利施設の導入は現時点では検討段階にある。今後、これらの施設がもたらす流況への影響を計算結果に反映させる手法を議論し、低平地特有の流況を考慮可能なモデルへの改良を進める。同時に、河道情報(標高、断面形状等)の精度向上と、溢水等による氾濫現象を取り込むためのアルゴリズムを検討する。 上記の検討を進めながら、構築したモデルのアルゴリズムや計算上のミスが無いか十分に精査する。最終的に、将来の目的である気象災害リスク配信システムとの結合による社会実装にむけて、本課題で達成できた部分と今後の課題を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス蔓延防止を目的に所属機関で打ち出した出張自粛方針を受け、予定していた現地調査を取りやめたため次年度使用額が発生した。 今後状況が改善した後に、早急に現地に赴き、調査及び現地協力機関との打合せを実施する予定である。
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