研究実績の概要 |
本研究は、農地環境と自然環境間のマダニ類およびその保有病原体の移出入を推定することを目的として、両環境間におけるマダニの集団遺伝学的構造および病原体朋友状況を明らかにすることを目的としている。集団遺伝学的解析を行なう上で次世代シーケンサーによるSNP検出を行なうこととしたが、マダニ類は体内に様々な共生細菌類を有しており、マダニ個体全体を用いてDNAを抽出すると、それらのDNAも同時に抽出してしまい、解析にバイアスが生じる懸念が有る。そこで本年度はまず、コンタミネーションを抑えたマダニ類DNA抽出法の確立を試みた。原虫病研究センターで継代維持されていたフタトゲチマダニを70%エタノールで固定し、8本の脚からフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールをもちいてDNAを抽出したが、DNA濃度が十分ではなかった。またフラグメント長の分布を確認したところ、DNAが短いフラグメントに断片化されており、DNAの質も十分ではないことがわかった。これは、マダニ個体を70%エタノールで固定する際に、エタノールが十分に浸透しておらず、細胞の自己融解が進んでしまった可能性が考えられる。今後、冷凍固定または生鮮個体を用いてDNA抽出を試みる予定である。 また、マイクロサテライトDNA領域を用いた集団遺伝学的解析も可能にするために、近年データベースに登録されたニュージーランド産のフタトゲチマダニの全ゲノム解析データを用いて、マイクロサテライトDNA領域の探索も開始した。現在108,295領域を発見し、利用可能性を検証している。
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