研究実績の概要 |
牛バベシアによって引き起こされる牛バベシア病は、畜産業に多大な経済的損失を与えている。牛バベシアは水牛などの牛以外の宿主からも頻繁に検出されており、そこからマダニによって牛に伝播する可能性が危惧されている。そのため、牛だけでなく牛以外の宿主における牛バベシアの感染も監視する必要がある。本研究では、モンゴル国のラクダを対象に、モンゴルの牛から過去に検出された臨床学的に重要な3種の牛バベシア(Babesia bovis、B. bigemina、およびBabesia sp. Mymensingh)の感染について疫学調査を行った。我々は、モンゴル国内の6県のラクダ計305頭から採取した血液DNAサンプルについて、原虫特異的PCR法を用いてスクリーニング調査を行った。その結果、モンゴル国のラクダは調査した3種すべての牛バベシアに感染していることが判明した。B. bovis、B. bigemina、およびBabesia sp. Mymensinghの全体陽性率はそれぞれ32.1%、21.6%、24.3%であり、調査対象動物の52.5%が少なくとも1種の牛バベシアに感染している実態が明らかとなった。モンゴル国では通常牛とラクダが放牧地を共有しており、さらに牛に寄生するマダニ種はラクダにも寄生する。これらの背景から、牛とラクダの間でマダニを介した牛バベシアの伝播が起こっている可能性が示唆された。したがって、モンゴル国における牛バベシア病の防除戦略には、ラクダにおける牛バベシア感染の対策を含める必要がある。本研究は、モンゴル(Institute of Veterinary Medicine, Mongolian University of Life Sciences)との国際共同研究として実施した。
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