研究実績の概要 |
ラットES細胞から、エピブラスト様細胞(EpiLC)を効率的に分化誘導することを目指した。昨年度にいくつかの培養条件を検討したところ、EpiLC、およびその先の始原生殖細胞様細胞(PGCLC)への分化を示唆する結果を得た。今年度は、分化誘導した細胞をRNA-seqに供し、以前に当室で取得したin vivo エピブラストとPGCのグローバルな遺伝子発現(Kobayashi et al., 2019, Development)と比較することにより、その分化段階を判定した。まず、主成分分析により、各ライブラリー(N=2)はES、EpiLC、PGCLCと、細胞種ごとに分かれるパターンを示した。EpiLCにおいて、エピブラストと同様に、Dnmt3aやDnmt3bの高発現が見られた。PGCLCでは、Prdm14, Tfap2cといった初期PGCマーカーは高発現し、Ddx4やDazlといった後期PGCマーカーは低発現を示した。これらの結果から、誘導したPGCLCは、in vivoでは性分化より前のステージに相当すると推測した。 一方で、ラットES細胞のナイーブ型としての特性を確認する実験も行った。ナイーブ型であるマウスES細胞は、EpiLCを経ないと、その先のPGCLCに分化することができない。そこで、ラットES細胞も、EpiLCへの分化がその先の細胞種への分化にも必要であるかを検討した。ラットES細胞を凝集化し、PGCLC分化誘導培地で3日間以上培養したが、PGCレポーター遺伝子の発現陽性細胞はほとんど出現しなかった。したがって、ラットES細胞はマウスと同様に、EpiLCを経ないと先の発生段階には分化できないことがわかった。
|