研究実績の概要 |
輸送小胞は様々なコートタンパク質の重合により形成されるが、イノシトールリン脂質をはじめとする脂質の役割については不明な点がある。申請者は以前生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を利用した定量的解析を行い、後期エンドソームにおけるイノシトールリン脂質の合成経路がオートファゴソームとリソソームの融合に寄与することを示した(Baba, T., et al., 2019, EMBO J.)。本研究では細胞内オルガネラの脂質二重膜のBRETによる定量解析を構築し、それらのオルガネラと小胞輸送形成との関わりを明らかにする。 これまで作成した初期エンドソームと後期エンドソームのBRETによる定量法を用いて、初期エンドソームと後期エンドソームのPI3Pの量を調べ、初期エンドソームのPI3Pの減少は後期エンドソーム・リソソームのPI4P量に影響を与えることが分かった。この結果は初期エンドソームのPI3Pが後期エンドソームへの成熟に寄与することを示唆している。また、アンジオテンジン受容体のリガンド刺激に伴うエンドサイトーシスにおけるPIP5Kの役割について調べた。哺乳類ではPI(4,5)P2を産生するPIP5Kは3種存在するが、そのうち一つがエンドサイトーシスを抑制する働き持つことが分かった。最終年度では、受容体のリガンド刺激に伴う細胞膜イノシトールリン脂質の量的変化を調べ、PIP5Kがイノシトールリン脂質の正常な量的調節に働くことを見出した。
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