本研究は生きている細胞で物質輸送を担当する小胞の運動を生物物理学の観点で分析し、その物理特徴に基づいて小胞と細胞骨格の相互作用の種類を分類することを目的とする。今までの研究は、小胞を3次元でトラッキングしその座標から小胞の運動を分析してきたが、小胞がどの細胞骨格と相互作用して輸送されるのかは複雑なイメージング技術が必要になり、相互作用の正体を正確に解明するのは極めて難しいであった。本研究では、機械学習の技術を用いてその問題点を解決し小胞トラッキング座標データから小胞と細胞骨格の相互作用の種類を分類することを目指す。 2020年度の計画は、1)小胞運動データから抽出した物理的な特徴量(速度、乗り換えにかかる時間、乗り換えの角度、相互作用が行った区間の長さ、など)を検討し、機械学習に使われる特徴量を決定する。2)小胞と細胞骨格の相互作用に関わる特徴量に基づいて機械学習アルゴリズムを適用し、予測率を高める方法を工夫して学習アルゴリズムを最適化する。 計画1)において、小胞の3次元座標データから数値解析方法で小胞と細胞骨格との相互作用が行った区間を取り出し、4つの物理的な特徴量(速度、乗り換えにかかる時間、乗り換えの角度、相互作用が行った区間の長さ)から機械学習に活用可能な2つの特徴量(速度と相互作用が行った区間の長さ)をスクリーニングすることに成功した。計画2)において、機械学習のトレーニングデータの最適化によって、90%の正確度で小胞と相互作用する細胞骨格の種類が予測できるアルゴリズムの作成に成功した。
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